【この人に聞く・熊本地震39】県弁護士会災害対策委員長の鹿瀬島正剛さん 高齢・低所得者の自宅再建 「個別事情を把握し支援を」
県弁護士会は4月、熊本地震以降、2年間活動してきた災害対策本部を発展的に解消し、災害対策委員会を設置した。初代委員長に就いた鹿瀬島正剛さん(50)に、被災者の自立再建に向けた課題などを聞いた。(聞き手・山口尚久)
-これまでどんな活動をしてきましたか。
「震災後、必要な法的手続きをまとめたQ&Aを3万部配り、ホームページにも公開した。2年間に電話と面談で約1万4千件に上る地震関連の相談に応じてきた。無料電話相談は今後も続けたい」
-現在の課題は。
「家を再建して自立できた人と、できない人との格差が広がっている。収入や貯蓄など金銭面が最も大きな問題。建築業者が見つからず、工事費も高騰している。ローンを組めない高齢者や低所得者の自宅再建が課題だ」
-県弁護士会は南阿蘇村と弁護士の派遣協定を結び、無料相談会を開いています。
「地震直後は各被災世帯に当てはまる支援制度を紹介すれば良かった。しかし、今は被災者がどこでどんな人生を送りたいのか、個別の状況を把握しなければ助言できない。夫婦で思いが食い違うことも。また支援の対象なのに、制度を知らずに申請していないケースも少なくない。チェックリストを作り、申請漏れを探している。行政は支援制度の周知に努めてほしい」
-行政に期待することはありますか。
「人が住まない地域に未来はない。自宅を再建して地元に戻ってくる被災者には一部損壊でも、より手厚く支援すべきだ。まずは被災者がどんな支援を必要としているか把握することが必要だ」
-自宅の納屋などで軒先避難を続けている被災者への追加支援を求めていますね。
「結果論だが、自宅の修理に最大約58万円を助成する市町村の応急修理制度を『利用しない方が良かった』という被災者の声も多かった。十分な修理ができない上、仮設住宅や災害公営住宅に入居できなくなるからだ。法律上、応急修理制度の利用者が仮設に入居できない規定はない。空き部屋も増えており、軒先避難者などが入居できるよう柔軟に運用してほしい」
「支援内容を自宅の損壊状況だけで決めるのは問題だ。自立再建に何が課題なのか、仕事や健康状態、家族の支援の有無など個別の事情を把握し、丁寧な対応が不可欠。大津町が導入した住宅再建の借入金の利子助成など、復興基金を積極的に活用するべきだ」
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