【この人に聞く・熊本地震1年④】熊本復興事務所長の辻芳樹さん 阿蘇路復旧、現地で迅速に 「進み具合可能な限り公開」
阿蘇大橋の崩落などで、阿蘇地域は複数の基幹道路が寸断されたままだ。国土交通省は24日、道路復旧の加速化を目指す熊本復興事務所(34人)を南阿蘇村に開設した。大規模で長期にわたる復旧事業の見通しや課題について辻芳樹所長に聞いた。(堀江利雅)
-所管5事業のうち、新阿蘇大橋は2020年度、阿蘇長陽大橋を通る村道は今夏中の開通が目標です。残りの事業の見通しは。
「国道57号現ルートの復旧と、上部の山腹崩壊(高さ約700メートル、幅約200メートル)の砂防事業は無人重機による不安定土砂の掘削が終わり、1月から有人でボーリングをして地盤への影響を調べている。その結果を見て工法や工期を決める。阿蘇市方面の人々には生活需要の高い道路で、早期の復旧を目指すが、恒久的な安全の確保も重要だ」
「昨年末に仮復旧した県道熊本高森線の本復旧は6本ある橋の被害が激しく、簡単ではない。唯一未着手で、上部構造の架け替えが必要な俵山大橋の復旧工事も月内に始める。復旧が完了した区間から順次開通する予定だ。工事の進み具合や現場の状況については住民の関心が高い。可能な限り随時公開したい」
-現地事務所の利点は何でしょうか。
「住民の生の声が届き、現場作業員とも近い。課題の把握と対応が迅速にでき、県や地元市町村と連携も強まる。用地交渉も地権者の方と顔を合わせて丁寧に進めることができる」
-事務所には国土技術政策総合研究所の熊本地震復旧対策研究室も入りますね。
「スタッフは3人。高度な技術的助言をしてくれると思う。橋や道路構造のスペシャリストで、日本の災害復旧技術の研究、蓄積にも期待している」
-梅雨時期は豪雨などが懸念されます。
「昨年5、6月は雨や霧により、作業日数が計画の5割弱しか確保できず、新たな土砂災害も多発した。現場は火山灰層でぬかるみやすく今年も最大限の安全対策をする。梅雨を乗り切れば、阿蘇長陽大橋を通る村道などの完工時期も見えてくるだろう」
「新たな災害の警戒や発生時の調査について、自治体を支援するのもわれわれの役目だ。起きないことを祈っているが、また激甚的な災害が発生した場合には復旧にも携わることになるかもしれない」
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