【この人に聞く・熊本地震1年②】県建設業協会長の橋口光徳さん 復旧・復興は“特需” 「人口減、見据えた対応を」
道路や橋をはじめ、さまざまな公共施設が熊本地震で大きな被害を受けた。その復旧・復興の担い手である建設業界のこの1年の対応や今後の課題について、県建設業協会の橋口光徳会長に聞いた。(太路秀紀)
-県内の建設業界にとって、どのような1年でしたか。
「巨大災害の発生に当初、市町村レベルではかなり混乱した。復旧工事に地元の建設業者が足りず、より被害が大きい地域の業者に助けを求めて断られたなど、笑えない話もあった」
「一方で、大規模災害の対応経験がある国の力は大きかった。発生直後は国が大量の専門技術者を投入して、応急復旧に道筋をつけた。巨大災害への対応では、市町村の体制が整うまでの緊急対応として、国が司令塔となって復旧・復興に当たるべきだと痛感した」
-復旧・復興で急増した公共工事の入札では、労働力不足や資機材の高騰で、入札が成立しない「不調」が発生しています。
「業界からの要望を受けて、余裕を持たせた工期の設定など国や県が対応した結果、受注環境はかなり改善された。市町村にも対応を求めている。今後、不調の抑制に効果が出てくるはずだ」
「それでも不調は発生するだろう。急増した工事に対し、短期的には県内業者だけでは足りない。しかし、全国的に見ても建設業界の労働力は限られており、他県からの参入にも限界がある。民間の復旧需要もあるので、行政には優先順位をつけた計画的な発注をしてもらうしかない」
-震災を経て、どんな教訓を得ましたか。
「意外に重要なのは復旧・復興を担う建設業者の資金需要への対応。金融機関からの融資が不十分だと、急増する工事に対応できない業者もいる。今回は県から金融機関へ支援を要請してもらった」
-今後の課題は何でしょう。
「難しいのは人口減少時代も見据えた復旧・復興への対応だ。復旧・復興は業界にとって期間限定の“特需”だ。これに合わせて業界が肥大化すると後が続かない。労働人口の減少は避けて通れないため、人が減っても生産性を維持・向上させる対策を打たなければならない。協会として情報通信技術を活用した工事や無人化施工などを研究する委員会を立ち上げ、対応を検討する」
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