【この人に聞く・熊本地震35】まちづくりコンサルタントの江田隆三さん 地域再生のポイントは 「より便利な住環境構築を」

熊本日日新聞 2016年12月7日 00:00
 ◇<b>えだ・りゅうぞう</b> NPO法人「日本都市計画家協会」理事、認定都市プランナー。中越地震で新潟県山古志村(現・長岡市)の復興を5年間支援。東日本大震災では福島県新地町の集団移転に6年間携わる。熊本地震を機に、代表を務める地域計画連合(東京)の事務所支店を熊本市に置いた。東京都在住、62歳。
 ◇えだ・りゅうぞう NPO法人「日本都市計画家協会」理事、認定都市プランナー。中越地震で新潟県山古志村(現・長岡市)の復興を5年間支援。東日本大震災では福島県新地町の集団移転に6年間携わる。熊本地震を機に、代表を務める地域計画連合(東京)の事務所支店を熊本市に置いた。東京都在住、62歳。

 新潟県の中越地震や東日本大震災では、地域を単位とした復興をどう進めるかが課題になった。まちづくりコンサルタントとして、新潟や福島の復興に携わり、熊本地震の被災地を調査している江田隆三さんに、地域再生の重要ポイントを聞いた。(清田秀孝)

 -熊本地震をどう見ていますか。

 「多くの市町村が被災したが、一つの自治体の中でも被害はまだらの状況にある。だからこそ甚大な区域に目配せし、復旧・復興の具体的な目標像となる計画が必要だ。ただ、自治体のマンパワーには限界がある。注力する地区を絞り、地元との丁寧な合意形成が大事だろう」

 -各地の震災で地域の復興はどのように進んだのでしょう。

 「阪神大震災は、被害が甚大でも、自治体の手が回らない『グレーゾーン』と呼ばれた地区があった。そこでは住民が『まちづくり協議会』をつくり、識者らと協力して復興の方向性を探った」

 「中越地震の被災地は小さな自治体が多く、住民が地域事情に明るかった。そこで、復興が難しそうな地域を基準に専門家が現地に行き、復興への合意形成を支援した。東日本大震災は被災地が広大で、人手が回らなかった。このため、外部の支援を受ける意欲が高かった地区のみに専門家が入った」

 -熊本の復興はどう進めるべきだと。

 「10を超える市町村の合計で30~40程度の地区・集落の被害が大きいので、地区・集落ごとの再生計画が必要だと思う。創造的な復旧の機会と捉え、将来像を地域で考えるべきだ。その単位は小学校区や行政区、集落などがふさわしい。老若男女で課題を共有し、将来像を描いてほしい」

 -熊本の被災地を回って気付いたことは。

 「嘉島町を訪ねると立派な県道が走っていた。だが、ある集落に入ると、各世帯の敷地は広いのに、車がすれ違うのも難しい狭い道が目についた。一方、別の集落には『改修道路』と記された石碑があり、そこは道が広く、明るい雰囲気がした。かつて地域で道づくりに当たったのだろう。『道路整備は公共事業』と誰もが思うが、集落の道を広げるには住民でルールを定め、家々の塀を少しずつ動かす方法もある。そうすれば救急車両が通行でき、災害時に役立つはずだ」

 -復興で大事なことは何ですか。

 「被災前の街並みの再現にとらわれず、より便利な住環境に変えるのが『復興』と言える。その過程でコミュニティーの力を引き出すことが大事だ。災害を機に外とオープンな関係をつくり、地域の魅力を再発見すれば、熱心な支援者を集めるチャンスにもなるだろう」

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