【この人に聞く・熊本地震32】熊本大学大学院減災型社会システム実践研究教育センター特任准教授の古本尚樹さん 復興期の被災者支援 「民間と協力、見守りを」
![◇<b>ふるもと・なおき</b> 北海道生まれ。北海道大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。人と防災未来センター研究部主任研究員などを経て、今年6月から現職。専門は地域医療、災害医療。熊本市在住。48歳。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160926TAN000229000_06.jpg?itok=rPYplruz)
熊本地震発生から半年がたち、被災者の多くが仮設団地などで新たな一歩を踏み出した。長い復旧・復興期に向き合うためには、どのような支援体制が必要か。熊本大大学院減災型社会システム実践研究教育センターの古本尚樹・特任准教授に聞いた。(小野由起子)
-震災直後、支援の現場は混乱しました。
「前任地の人と防災未来センター(神戸市)では自治体の防災担当者の研修を担当していたが、熊本の自治体は災害対応のプロフェッショナルを養成していただろうか。物資の仕分けから避難所の設営、その後の対応など、必要とされる支援の流れを総合的に把握し、ハンドリングできる人がいなければ、現場は混乱する」
-自治体職員の過労や心のケアも問題だと指摘されています。
「現場で被災者と接する職員は、さまざまな要望をぶつけられる。彼らも被災者なのに、自らの支援は後回しで疲弊している。職員支援と住民支援は両輪の関係にある。自治体職員が健康でないと、住民サポートもうまくいかない」
-生活再建の過程で注意すべきことは。
「避難所を出ると、被災者が見えにくくなる。特にみなし仮設では、地域とのつながりも絶たれる。孤立化を防ぐために自治体は継続的に安否確認する必要があるが、各地に散った被災者の生活実態を把握する仕組みはまだできていない」
「仮設団地の集会所にも出てこず、引きこもりがちな人もいる。近くのスーパーの店員に声掛けしてもらうなど、民間にも協力してもらい、日常生活を通した被災者の見守りができないか」
-顔の見える関係づくりが必要ですね。
「住民間の信頼関係は、減災という点でも役に立つ。災害時の支援体制についても住民と行政で合意形成ができていればトラブルが減り、自治体職員の負担軽減にもなる」
-被災地はこれから冬に向かいます。
「北海道の台風被害など、異常気象で以前では考えられないような災害が起きている。熊本でも今冬、豪雪被害があるかもしれない。積雪や凍結は交通網を分断し、さらなる複合災害を招く。季節に応じて、支援体制を見直す必要がある」
-被災自治体に期待することは。
「まずは職員のスキルアップ。ハードとソフトの双方から総合的な研修を実施し、人材を育ててほしい。神戸や東北の経験が熊本で生かされたように、次は熊本の職員が、地震の教訓を他の被災地に伝えてほしい」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
地震で崩れた熊本城石垣、修復の担い手育成を 造園職人向けに研修会
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災の油彩画、修復報告展 御船町出身・故田中憲一さんの18点 熊本県立美術館分館
熊本日日新聞 -
熊本城復旧などの進捗を確認 市歴史まちづくり協議会
熊本日日新聞 -
熊本市の魅力、海外メディアにアピール 東京・日本外国特派員協会で「熊本ナイト」 熊本城の復興や半導体集積
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災…益城町が能登支える「芋フェス」 11日、NPOなど企画 能登の特産品販売、トークショーも
熊本日日新聞 -
「安全な車中泊」普及へ、熊本で産学官連携 避難者の実態把握、情報提供…双方向のアプリ開発へ
熊本日日新聞 -
石之室古墳、石棺修復へ作業場設置 熊本市の塚原古墳群 2027年度から復旧工事
熊本日日新聞 -
中居さん引退「気持ちの整理つかない」 県内ファン、驚きと困惑
熊本日日新聞 -
4期16年「県民の幸せに尽くした」 前熊本県知事・蒲島氏が講演 熊日情報文化懇話会1月例会
熊本日日新聞 -
【あの日から 阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊦】伝承、防災考えるきっかけに 北淡震災記念公園総支配人の米山さん
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。