【この人に聞く・熊本地震30】「日本冒険遊び場づくり協会」事務統括理事の天野秀昭さん 子どもの心のケア 「遊びで感情吐き出させて」
阪神大震災や東日本大震災で、遊びを通して子どもの心のケアに取り組んできたNPO法人「日本冒険遊び場づくり協会」。事務統括理事の天野秀昭さんは、熊本で出会った子どもたちの「おとなしさ」が気になるという。傷ついた子どもに、大人はどう向き合えばいいのだろうか。(小野由起子)
-被災した子どもの多くが、今もストレスを抱えています。
「現実に打ちひしがれた大人の表情を見て、子どもは迷惑掛けちゃいけない、我慢しなくちゃいけないと、無意識のうちに自らの心にふたをしてしまう。それがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を誘発する。大人を喜ばせたいと、ボランティアを頑張るような『いい子』にも、心の奥底でくすぶっている感情がある。子どもだって、地震や生活の変化に傷ついている」
-大人はどう向き合えばいいでしょう。
「素直に気持ちを表現していい、楽しんでもいいんだよと意思表示してほしい。神戸や東北では、地震ごっこや津波ごっこが見られた。子どもは遊びを通して、理不尽な体験を理解しようとする。感情を外に出すやり方や時期は子どもによって違うが、怒ることなく気持ちを吐き出させてやってほしい」
-被災地で、遊びの大切さを訴えています。
「被災地に限らず、現代社会では遊びが奪われている。遊びとは本来、創造的なもので、子ども同士がぶつかりながらルールを決め、一人一人が主役の世界をつくっていくもの。十分遊んでいる子は自分で自分の世界を切り開いていけるし、苦難に対する耐性もある」
「子どもの心のケアは阪神大震災のころに比べて言われるようになったが、熊本の被災地でもまだ、大人が決めたルールで遊ばせるような、大人目線による支援が目立つように思う」
-復興の過程で子どもにとって必要なものは何でしょうか。
「遊ばないと、心が死んでしまう。仮設団地にはぜひ、子どもたちが自由に遊べる場や、話ができる場を作ってほしい。砂場や積み木のような、作ったり壊したりして遊べる遊具があれば十分だ。中高生にとっては場よりも人。家族に限らず、うっ屈した思いを聞いてあげられる人が必要。いつでも大人が受け止めてくれると思えれば、子どもは楽になる」
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