【この人に聞く・熊本地震29】市原正文産山村長 住宅被害、当初から屋内調査 「建築士に依頼、公平性保つ」
![◇<b>いちはら・まさふみ</b> 産山村生まれ。阿蘇高卒。1969年、産山村役場入庁。議会事務局長や住民課長などを経た後、93年に役場を退職。同年から村教育長を5期20年務めた。2013年11月から現職。67歳。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160906TAN000143000_03.jpg?itok=LmiByknZ)
熊本地震の罹災[りさい]証明書発行に伴う県内市町村の住宅被害調査で、調査方法や判定結果を巡り、被災者の間に不満が募っている。そんな中、産山村は、調査当初から建築士の力を借り、外観と同時に屋内も調べる方法を導入して約200件の調査をほぼ混乱なく終えた。同村の市原正文村長に独自の調査方法を考えた経緯などを聞いた。(太路秀紀)
-村は何度も大きな揺れに襲われました。
「村は4月14日の前震で震度4を、16日午前1時25分の本震では震度5強を観測した。しかし、それ以上に大きかったのは本震から2時間半後に起きた、村内を震源とする震度6強。私も役場にいたが、役場が壊れるのではないかと感じた」
-住宅の被害は。
「翌17日から3日間、村職員による大まかな調査を実施し、約100戸の被災を確認した。村内では、倒壊した住宅がほとんどなく、外観からは被害が分かりにくいという特徴があった」
-4月22日の対策本部会議で協議した調査方法とは。
「村職員は約40人。避難所運営などに充てる人員を考えると住宅被害調査に割ける職員は限られていた。職員は建築に関して素人でもある。職員が外観を目視する1次調査をしても判定にばらつきが生じて村民に納得してもらえず、結局は内部を調べる2次調査に至るだろうと考えた」
「そこで、1次調査の時点から専門家である建築士に依頼し、内部を調べる2次調査の要素を盛り込めば、村民の判定に対する納得も得やすいと考えた。結果として調査した約200件のうち、再調査を求められたのは21件にとどまった」
-どのように建築士を集めましたか。
「県建築士会に相談したが派遣は難しいとの答えだった。職員の提案でフェイスブックで呼び掛けたら、大分県内の建築士がみつかり、その人脈で同県内の5人の建築士に来てもらえることになった。多少の委託費はかかってもやむを得ないと考えた」
-調査の態勢は。
「建築士をリーダーに村職員1人と補助の建設作業員1人の1班3人だ。5班態勢で4月26日から調査を始めた。建築士に見てもらうことで村民にも安心感があったようだ。職員は全員が村民と顔見知り。職員だけだったら、『あっちの判定は甘いが、こっちは厳しい』などと言われ、職員が精神的にもたなかっただろう」
-他市町村へ助言はありますか。
「今回は県内どこの首長も今まで経験したことのない災害だ。産山村は小さな自治体だから可能だったとも言え、他市町村への助言などは特段思い浮かばない。それぞれの市町村でそれぞれの課題に対応するしかない」
RECOMMEND
あなたにおすすめTHEMES
熊本地震-
【能登地震半年 地方紙記者が見た被災地⑫】二つの被災地、つなぐ意義 熊本日日新聞社・堀江利雅記者
熊本日日新聞 -
吉田松花堂(熊本市)所有者に国重文指定書を伝達 「頑張って守る」
熊本日日新聞 -
熊本市役所本庁舎建て替え、市議会の議論が焦点に 議員にくすぶる異論、そもそも論…
熊本日日新聞 -
中央区役所「花畑町別館跡に」 熊本市長、市議会に移転案提示 「多くの市民が利用しやすい」
熊本日日新聞 -
熊本競輪場の正門前、花で明るく レース再開へ市民が植栽
熊本日日新聞 -
競輪選手、新市街「バンク」疾走 熊本競輪場再開前イベント
熊本日日新聞 -
熊本地震からの復興、動画と冊子に 九州農政局の若手職員が作成、能登の被災農家に配布へ
熊本日日新聞 -
五百旗頭さん送る会、歴代首相が参列 蒲島前知事「熊本県民のため力注いだ」
熊本日日新聞 -
当時6歳の姉、東日本大震災で犠牲に… 宮城の女子高生、益城町で13日から写真展 見つかった遺品など27点
熊本日日新聞 -
熊本・南阿蘇鉄道 駅はしごして 全線再開1周年記念イベント 高森町、南阿蘇村の8駅
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
「すべての道は熊本に通じる」とは、蒲島郁夫前知事が熊本県内の道路整備に向けた意気込みを語る際に使ってきたフレーズ。地域高規格道路などの骨格的な道路や鉄道網は、地域・産業の活性化はもちろん大規模災害時の重要性も注目されています。連載企画「移動の足を考える」では、熊本県内の〝足〟の現在の姿を紹介し、未来の形を考えます。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指す記者と一緒に楽しく学んでいきましょう。
※次回は「相続・贈与は難しい」後編。7月19日(金)に更新予定です。