【この人に聞く・熊本地震29】市原正文産山村長 住宅被害、当初から屋内調査 「建築士に依頼、公平性保つ」
熊本地震の罹災[りさい]証明書発行に伴う県内市町村の住宅被害調査で、調査方法や判定結果を巡り、被災者の間に不満が募っている。そんな中、産山村は、調査当初から建築士の力を借り、外観と同時に屋内も調べる方法を導入して約200件の調査をほぼ混乱なく終えた。同村の市原正文村長に独自の調査方法を考えた経緯などを聞いた。(太路秀紀)
-村は何度も大きな揺れに襲われました。
「村は4月14日の前震で震度4を、16日午前1時25分の本震では震度5強を観測した。しかし、それ以上に大きかったのは本震から2時間半後に起きた、村内を震源とする震度6強。私も役場にいたが、役場が壊れるのではないかと感じた」
-住宅の被害は。
「翌17日から3日間、村職員による大まかな調査を実施し、約100戸の被災を確認した。村内では、倒壊した住宅がほとんどなく、外観からは被害が分かりにくいという特徴があった」
-4月22日の対策本部会議で協議した調査方法とは。
「村職員は約40人。避難所運営などに充てる人員を考えると住宅被害調査に割ける職員は限られていた。職員は建築に関して素人でもある。職員が外観を目視する1次調査をしても判定にばらつきが生じて村民に納得してもらえず、結局は内部を調べる2次調査に至るだろうと考えた」
「そこで、1次調査の時点から専門家である建築士に依頼し、内部を調べる2次調査の要素を盛り込めば、村民の判定に対する納得も得やすいと考えた。結果として調査した約200件のうち、再調査を求められたのは21件にとどまった」
-どのように建築士を集めましたか。
「県建築士会に相談したが派遣は難しいとの答えだった。職員の提案でフェイスブックで呼び掛けたら、大分県内の建築士がみつかり、その人脈で同県内の5人の建築士に来てもらえることになった。多少の委託費はかかってもやむを得ないと考えた」
-調査の態勢は。
「建築士をリーダーに村職員1人と補助の建設作業員1人の1班3人だ。5班態勢で4月26日から調査を始めた。建築士に見てもらうことで村民にも安心感があったようだ。職員は全員が村民と顔見知り。職員だけだったら、『あっちの判定は甘いが、こっちは厳しい』などと言われ、職員が精神的にもたなかっただろう」
-他市町村へ助言はありますか。
「今回は県内どこの首長も今まで経験したことのない災害だ。産山村は小さな自治体だから可能だったとも言え、他市町村への助言などは特段思い浮かばない。それぞれの市町村でそれぞれの課題に対応するしかない」
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