【この人に聞く・熊本地震28】新潟大災害・復興科学研究所の田村圭子教授 住宅被害調査の公平性に配慮 「自治体間協議で調整を」
住宅の被害認定調査の公平性を保ちながら、罹災[りさい]証明書を迅速に発行するにはどうするべきか。熊本地震で熊本市以外の自治体が採用した共通調査票の開発にかかわった新潟大災害・復興科学研究所の田村圭子教授(危機管理、災害福祉)に聞いた。(並松昭光)
-熊本地震で2次調査の依頼が相次いでいます。
「増えている大きな原因は、揺れが続いて被害が拡大したこと。1次、2次と分かれた現行の調査は迅速さを求める人と、詳細な調査を望む人の両方のニーズを満たす制度だ」
「ただ、自治体の弾力的運用を認める自治事務であるがゆえに、大災害のたびに混乱が生じてきた仕組みでもある。そのため公平性を保つさまざまな『標準化』が試みられてきた。今回の共通調査票導入もその一つ。先進的な取り組みだった」
-熊本市は、判定を急ぐ現場のニーズから独自の調査票を導入しました。
「自治体の弾力的な運用は必要だが、一方で広域で各自治体が同じ取り組みをしている場合、違いがあると、被災者の不満につながる。自治体間で被災者支援に関する『協議会』や『調整会議』を設け、新たな調査票導入を話し合うべきだったのではないか。新潟県や岩手県など先進地では、県が調整役を果たしている」
-ほかに公正性を高める方策は。
「認定調査は地元職員以外の応援者が担うのが望ましい。外観調査の1次は全国からの応援を得て迅速に進める。室内調査で住民からも聞き取りする2次でも、例えば方言がある程度理解できる九州や、県内でも他の地域の応援者が担当し、外部の目線を保つことが被災者の納得につながる。職員の応援派遣の期間を延ばす態勢づくりを求めたい」
-それでも、「一部損壊」にとどまった被災者には不公平感が残りませんか。
「一部損壊となった被災者への支援は、これまでも議論されてきた。ただ、生活再建支援金や仮設住宅への入居など、法律に基づき公金が投入される支援では必ず『線引き』は必要で、住宅の被害程度に根拠を求めるのは一定の合理性がある」
「ただ、実際に不公平感はある。対応としては、自治体独自で一部損壊の被災者に義援金や見舞金を配分することも可能だ。協議会での調整など、各自治体間で公平を損なわない配慮は必要だろう」
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