【この人に聞く・熊本地震28】新潟大災害・復興科学研究所の田村圭子教授 住宅被害調査の公平性に配慮 「自治体間協議で調整を」
![◇<b>たむら・けいこ</b> 神戸市生まれ。京都大大学院博士後期課程単位取得。京都大防災研究所などを経て、2006年に新潟大災害復興科学センター特任准教授。14年から現職。新潟市在住。56歳。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160831TAN000213000_03.jpg?itok=QS1lndxz)
住宅の被害認定調査の公平性を保ちながら、罹災[りさい]証明書を迅速に発行するにはどうするべきか。熊本地震で熊本市以外の自治体が採用した共通調査票の開発にかかわった新潟大災害・復興科学研究所の田村圭子教授(危機管理、災害福祉)に聞いた。(並松昭光)
-熊本地震で2次調査の依頼が相次いでいます。
「増えている大きな原因は、揺れが続いて被害が拡大したこと。1次、2次と分かれた現行の調査は迅速さを求める人と、詳細な調査を望む人の両方のニーズを満たす制度だ」
「ただ、自治体の弾力的運用を認める自治事務であるがゆえに、大災害のたびに混乱が生じてきた仕組みでもある。そのため公平性を保つさまざまな『標準化』が試みられてきた。今回の共通調査票導入もその一つ。先進的な取り組みだった」
-熊本市は、判定を急ぐ現場のニーズから独自の調査票を導入しました。
「自治体の弾力的な運用は必要だが、一方で広域で各自治体が同じ取り組みをしている場合、違いがあると、被災者の不満につながる。自治体間で被災者支援に関する『協議会』や『調整会議』を設け、新たな調査票導入を話し合うべきだったのではないか。新潟県や岩手県など先進地では、県が調整役を果たしている」
-ほかに公正性を高める方策は。
「認定調査は地元職員以外の応援者が担うのが望ましい。外観調査の1次は全国からの応援を得て迅速に進める。室内調査で住民からも聞き取りする2次でも、例えば方言がある程度理解できる九州や、県内でも他の地域の応援者が担当し、外部の目線を保つことが被災者の納得につながる。職員の応援派遣の期間を延ばす態勢づくりを求めたい」
-それでも、「一部損壊」にとどまった被災者には不公平感が残りませんか。
「一部損壊となった被災者への支援は、これまでも議論されてきた。ただ、生活再建支援金や仮設住宅への入居など、法律に基づき公金が投入される支援では必ず『線引き』は必要で、住宅の被害程度に根拠を求めるのは一定の合理性がある」
「ただ、実際に不公平感はある。対応としては、自治体独自で一部損壊の被災者に義援金や見舞金を配分することも可能だ。協議会での調整など、各自治体間で公平を損なわない配慮は必要だろう」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
地震で崩れた熊本城石垣、修復の担い手育成を 造園職人向けに研修会
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災の油彩画、修復報告展 御船町出身・故田中憲一さんの18点 熊本県立美術館分館
熊本日日新聞 -
熊本城復旧などの進捗を確認 市歴史まちづくり協議会
熊本日日新聞 -
熊本市の魅力、海外メディアにアピール 東京・日本外国特派員協会で「熊本ナイト」 熊本城の復興や半導体集積
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災…益城町が能登支える「芋フェス」 11日、NPOなど企画 能登の特産品販売、トークショーも
熊本日日新聞 -
「安全な車中泊」普及へ、熊本で産学官連携 避難者の実態把握、情報提供…双方向のアプリ開発へ
熊本日日新聞 -
石之室古墳、石棺修復へ作業場設置 熊本市の塚原古墳群 2027年度から復旧工事
熊本日日新聞 -
中居さん引退「気持ちの整理つかない」 県内ファン、驚きと困惑
熊本日日新聞 -
4期16年「県民の幸せに尽くした」 前熊本県知事・蒲島氏が講演 熊日情報文化懇話会1月例会
熊本日日新聞 -
【あの日から 阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊦】伝承、防災考えるきっかけに 北淡震災記念公園総支配人の米山さん
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。