【この人に聞く・熊本地震27】県災害派遣福祉チームを指揮した川原秀夫さん 避難所で高齢者らを介助 「地域で生活支える体制を」
熊本地震では、介護福祉士などでつくる県災害派遣福祉チーム(熊本DCAT[ディーキャット])が初出動。県外から派遣されたDCATとともに、避難所で介助が必要な高齢者らのケアに当たった。チームを取りまとめた川原秀夫さん(66)=県地域密着型サービス連絡会代表=に、活動内容や課題を聞いた。(清島理紗)
-DCATはどんな活動をしましたか。
「4月14日の前震から11日後の25日に知事の要請があり、益城町の避難所に入った。岩手県と京都府のチームとも協力。1日10~15人で指定避難所を巡回し、介助が必要な人を特定した。入浴介助や福祉用具の相談、高齢者の運動のサポートなどを行った」
「5月初めには相談所も開設し、困り事への相談に力を入れた。『保健師から施設への入所を勧められたが、家族や友人と離れたくない』と訴えた高齢者や障害者には、避難所での生活を続けられるよう必要な介助をした。災害時でも、本人が望む限り地域で暮らせるよう支援するのが私たちの役目だ」
-活動する上で気を付けたことはありますか。
「被災者は見知らぬ人には不安を訴えにくい。関係を丁寧に築くことを徹底した。当初は数日ごとにメンバー交代していたが、6月末から期間を2週間ほどに延長。交代するときは引き継ぐスタッフと一緒に避難所を回り、顔を知ってもらうよう努めた」
-初出動で見えた課題は何ですか。
「福祉現場の人手不足だ。県内では施設関係者ら約600人がDCATメンバーとして登録しているが、今回出動できたのは20人ほど。県内外ともに、職員を派遣できる余裕があまりない。災害派遣医療チーム(DMAT[ディーマット])のように、災害発生後すぐに現地に入れるような体制にするべきだが、人手不足を解消しなければ難しい」
-被災者の生活は仮設住宅に移行しています。今後、どんな支援が必要ですか。
「避難所で支援するDCATとしての活動は7月で終わり。しかし、有志で仮設住宅に移った被災者支援を続けている。避難所で被災者と親しい関係を築いたことが、仮設での活動に生きていると感じる」
「仮設では買い物や掃除の手助け、服薬の確認などを行っている。最も大切なのはコミュニティーの形成だ。茶話会などを通し、地域で支え合う体制づくりに協力したい。それが高齢者らが介助を受けながら、地域で暮らし続けることにつながる」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
SKE48の井上瑠夏さん(菊池市出身)、復興支援で熊本県に寄付
熊本日日新聞 -
熊本城「宇土櫓続櫓」の石垣、復旧に向け解体作業に着手 28年度の積み直し完了目指す
熊本日日新聞 -
東日本大震災の語り部が熊本・益城町へ 23日、災害伝承などテーマに講演 熊日と河北新報の防災ワークショップ
熊本日日新聞 -
被災者に寄り添った支援 能登、熊本地震のボラセン運営者講演 日頃から役に立つ分野想定
熊本日日新聞 -
スペシャルオリンピックス日本・熊本、能登の被災地へ義援金贈呈
熊本日日新聞 -
福島の震災復興と被害伝承を考える 東稜高で復興庁の出前授業
熊本日日新聞 -
スイーツ、カレー、てんぷら串…自慢の逸品ずらり 「くまもと復興応援マルシェ」、グランメッセで17日まで
熊本日日新聞 -
行定監督「熊本から恩返し」 30日開幕、復興映画祭PRで県庁訪問
熊本日日新聞 -
くまもとアートボリス推進賞に東海大キャンパスなど3件
熊本日日新聞 -
復興の象徴「ゾロ」に感謝 大津小3年生が誕生日会開催
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「家計管理」。11月25日(月)に更新予定です。