【この人に聞く・熊本地震22】日本歯科医師会災害歯科コーディネーターの中久木康一さん 災害時の口腔ケア、課題は? 「高齢者、誤嚥性肺炎に注意」

熊本日日新聞 2016年7月14日 00:00
 ◇<b>なかくき・こういち</b> 東京医科歯科大大学院医歯学総合研究科助教、歯学博士。1998年同大卒、スリランカ・ペラデニア大留学、東京医科歯科大病院医員などを経て2009年より現職。熊本地震ではボランティアも含め7回、被災地入りした。東京都在住。
 ◇なかくき・こういち 東京医科歯科大大学院医歯学総合研究科助教、歯学博士。1998年同大卒、スリランカ・ペラデニア大留学、東京医科歯科大病院医員などを経て2009年より現職。熊本地震ではボランティアも含め7回、被災地入りした。東京都在住。

 熊本地震では県内外の歯科医師や歯科衛生士など、ボランティアを含め延べ約1200人の歯科関係者が支援に当たった。災害時に必要な口の中(口腔[こうくう])のケアや支援の課題などを、日本歯科医師会災害歯科コーディネーターの中久木康一・歯科医師(44)に聞いた。(林田賢一郎)

 -歯科医師会は今回、どう対応しましたか。

 「熊本県歯科医師会は前震翌日の4月15日から、全国の歯科医師会も22日には被災地入りした。往診時に使う、歯を削るポータブルユニットや洗浄水を持参し、診療や義歯修理などの応急処置に当たった。避難所には食料はあっても、歯ブラシや入れ歯の洗浄剤、フロス、歯間ブラシがなく、それらも持参しケアした」

 「大規模災害時、避難所では食事や救急医療が優先され、口腔ケアはおろそかになりがち。東日本大震災では、公的な歯科医派遣は1カ月遅れた。その反省を踏まえ、早期から介入できた」

 -早期介入がなぜ必要なのですか。

 「高齢者や障害者は誤嚥[ごえん]性肺炎の危険が高くなる。水がないため歯を磨かず、唾液も少なくなると、口内に細菌などが増える。誤って肺に入ると肺炎を引き起こす。阪神大震災の震災関連死のうち、24%は肺炎だった」

 -危険性が高いのはどのような被災者ですか。

 「高齢者や障害者ら、援助が必要な生活弱者。周囲に気を使って大規模避難所に行かず、自主避難所や福祉施設、危険でも自宅にとどまり、支援が届きにくい。胃ろうなどチューブで栄養摂取している人も常に口腔ケアが必要なのに、見逃されやすい」

 「災害時は多様な専門職が支援に集まり、被災者の命を守る。普段から横のつながりを持ち、総合力で対応すべきだ。日本歯科医師会も2010年から、災害歯科医療のコーディネーター育成を始めた。歯科関係団体による協議会も立ち上げ、災害対応マニュアルを作っていく計画だ」

 -避難所で気になった点はありますか。

 「居場所から水場まで遠く、水はあっても2リットル入りのペットボトルが地面に置かれているケースがあった。健康な人には何でもないが、高齢者には大きな負担になる。歯を磨き、入れ歯を洗うような日常生活を促すための、ちょっとした配慮が必要だ」

 -被災者の暮らしは仮設住宅や自宅に移っていきます。

 「水場に手すりや棚があるだけで生活しやすい。既にスロープ付きの仮設住宅が建設されるなど、東日本大震災時よりも進んでいると感じる。災害対応に完璧はないかもしれないが、前よりも進んでいかねばならない」

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本地震