【この人に聞く・熊本地震⑲】宮城大学非常勤講師の野村尚克さん トリプルボランティアとは? 「作業、観光、伝達で支援」

熊本日日新聞 2016年7月6日 00:00
 ◇<b>のむら・なおかつ</b> 札幌市出身。立教大大学院修了。社会デザイン学を専攻し、NPO法人や企業、行政の連携や協働を手掛ける企画会社「コーズドブランドラボ」の代表。2010年から現職。
 ◇のむら・なおかつ 札幌市出身。立教大大学院修了。社会デザイン学を専攻し、NPO法人や企業、行政の連携や協働を手掛ける企画会社「コーズドブランドラボ」の代表。2010年から現職。

 熊本地震では多くのボランティアが県内に駆けつけた。東日本大震災をきっかけに生まれ、1人が三つの支援を担う「トリプルボランティア」について、提唱者の一人で宮城大非常勤講師の野村尚克さん(43)に聞いた。(馬場正広)

 -地震後の熊本で何を心配されますか。

 「東日本大震災後、東北は深刻な観光客離れに陥った。観光地が被災し、自粛ムードもあって、メーンのファミリー層が観光に来なくなった。結果として産業が廃れ、失業や生活困窮などの“2次被災者”が発生した。熊本でも同じ傾向が考えられる。そこで誕生した支援の形が、トリプルボランティアだ」

 -どういうボランティアでしょうか。

 「がれき撤去などの『作業』は誰もが知るボランティア。そこに『観光』と『伝達』を加えて活動する支援法のことだ」

 「被災地に入るボランティアを観光客にしたてるという発想がある。復旧作業の合間に観光地を巡り、地元の店で飲食や買い物を楽しんでもらう」

 「伝達は、SNSなどを通じ、被災地の現状を発信してもらうこと。復興庁のまとめでは、東北には今もなお約16万人の避難者がいるが、メディアの注目が離れつつある中で、忘れられがちだ。伝達には被災地への関心をとどめ、変化を伝える役割がある」

 -ご自身も益城町でボランティアに参加されました。トリプルボランティアの効果はどうでしょうか。

 「熊本市では県外から来た人たちが、受け付けを締め切られてボランティアに参加できず、帰宅することも多かった。そういう人が観光や伝達に取り組めば、支援の輪は大きく広がる。東京では今、花の香酒造(和水町)の日本酒の売れ行きが伸びていると聞く。潜在的に被災者のために何かしたいと考える人は多く、息長く被災地を支えていくことができる」

 -都内の大学生3人のボランティアツアーを企画されました。

 「6月25日から4日間、熊本市や阿蘇市、益城町に滞在してもらい、トリプルボランティアを実践してもらった。ツアー後、ブログ記事などで、今の熊本の元気な姿を発信してもらう予定。地元商業者や東海大熊本キャンパスの学生と触れ合い、被災地で奮闘する強い熊本人に気付いてくれたと思う」

 -復興へのアドバイスはありますか。

 「一度訪れたボランティアは、復旧した姿を見に、再び被災地に戻ってくることが多い。それは熊本城などのモノだけでなく、熊本で出会った魅力的なヒトに再会するためだ。多様多彩なボランティアたちと被災者が、復興を一緒に担っていく。その“共創”の考え方が、今後の鍵を握っていると思う」

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