【この人に聞く・熊本地震⑧】新町古町復興プロジェクト事務局長の吉野徹朗さん 城下町の「町屋」復旧 「所有者支え『風景』残す」
熊本地震で、「町屋」と呼ばれる築100年前後の建物の多くが被災した熊本市中央区の新町・古町地区。ボランティア「くまもと新町古町復興プロジェクト」を立ち上げ、街並み復興に取り組む吉野徹朗事務局長に活動について聞いた。(石本智)
-設立のきっかけは。
「新町・古町地区には、町屋が400軒ほど残るといわれる。今回の震災で、多くの建物が壁や屋根が崩れるなどの被害を受けており、取り壊されるのではと危惧[きぐ]を抱いた。このままでは城下町の風景が変わってしまうと。何年か先、熊本城が元に戻った時に、この街並みが残っていないのはいけないと思った」
-メンバーは。
「両地区の住民有志15人ほど。町屋の復旧が活動のメインになっていることもあり、多くは建築関係者。『おせっかいし隊』と銘打った活動には、メンバーのほかにも、これまで延べ約200人がボランティアで参加してくれた」
-どんな取り組みを進めていますか。
「壊れた町屋のがれき撤去に加え、以前から両地区の町屋保存に取り組む『町屋研究会』や県建築士会青年部会と協力しながら、被災家屋調査を進めている。古い日本家屋は土壁や屋根が崩れることで、地震から柱やはりを守るようにできていて、見た目の被害は大きくても、修復できるものも多いと聞いている。そういう建物を、どうやって残せるかを検討している」
-街並み復興への手応えは。
「地域の人々が町屋の価値を見直してくれたのがうれしい。所有者からも、『できる限り復旧したい』『建物を壊さずに活用してくれる人に譲りたい』などの声が寄せられている。一軒一軒は文化財ではないが、多くの町屋が残る風景にこそ価値があると、改めて感じてくれたのではないか」
-今後の活動は。
「応急的に屋根などに掛けてあるブルーシートを、紫外線に強く耐久性の高いシルバーシートに変える予定だ。専門家を招き、講演会やセミナーも開催する。復旧には費用がかかるので、助成制度などの支援情報を提供し、所有者を支えていくのがわれわれの役割と考えている」
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