【この人に聞く・熊本地震⑦】「日本防災士会」県支部の宮下正一さん 災害対策の在り方は? 「官民の連携体制、構築を」
熊本地震では、防災の知識を備えた「防災士」が、避難所運営やボランティアで活躍している。今後の防災の在り方や心得について、NPO法人「日本防災士会」県支部の宮下正一支部長(64)に聞いた。(馬場正広)
-発生直後、県内約60人の会員防災士はどう動きましたか。
「4月15日早朝から益城町に入り、避難所などの情報収集にあたった。町中央公民館の駐車場に会の本部を構え、会員が備蓄していた食料や水を避難者に配布し、車中泊した住民らに声掛けを実施した」
-現在の活動は。
「全国から会員計約400人が随時益城町などに入り、がれきの撤去やブロック塀の解体など、一般ボランティアでは対応が難しい作業に取り組んでいる」
-県内では約千人が防災士に認定されているようです。
「講習と試験を受けて、日本防災士機構から認定されます。建設業、元自衛官、元消防士などが多いようで、県支部の会員はその一部です」
-行政や民間の災害への対策は十分だったのでしょうか。
「連続で震度7に見舞われたが、住民がパニックを起こすことは少なかった。阪神大震災や東日本大震災を経て、『いつか自分も災害に遭うかもしれない』という意識は高まっている。一方で、避難所以外にいる被災者の把握が遅れたり、支援の受け入れに手間取ったり、行政の備えの不十分さが目立った」
-今後災害に備え、今できることはなんでしょうか。
「災害はいつどこで起きるか分からないと、私たちも改めて知った。非常用食料など準備も大切だが、想定外は常に発生する。普段からあらゆる防災知識に触れておくことが身を守る一歩に繋がる。防災訓練に一度参加するだけで、災害時の初動は大きく変わる」
-今後、被災地で起こり得る問題は。
「高齢者や障害者、妊婦など、“災害弱者”の声をどう拾うかが課題。災害弱者は避難所に出てくることが難しく、自宅に取り残されていることが多い。地域で連絡網をつくり、声をかけ合うことが重要だ」
-地域の防災力を高めるため、必要なことは何でしょうか。
「個人の防災力を高めるほか、自治体が民間団体と連携できる体制の構築が必要だ。今回は地域の情報収集などにおいて、自治会や民生委員に頼り切りで、機能しないことが多く、過去の震災と同じことが繰り返された。国政レベルで防災への在り方を見直し、被災者の苦しみを無駄にしないため、熊本地震の教訓を生かさなければならない」
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