熊本豪雨から丸3年 「6・26」の教訓は生きたのか? インフラ復旧、治水対策の進み具合は?
球磨川流域を中心に67人が死亡(関連死2人含む)、2人が行方不明となった2020年7月4日の熊本豪雨から3年。今年は県内で死者・不明者563人を出した1953年の「6・26水害」から70年の節目でもある。6・26水害の教訓は熊本豪雨で生かされたのか。当時を振り返るとともに、球磨川流域で進められているインフラ復旧や治水対策の状況をまとめた。
問い続ける二つの災害
記録的豪雨で多くの犠牲者が出た1953年の「6・26水害」は、早期避難の重要性を教訓として残したが、2020年の熊本豪雨でも多くの命が失われた。逃げ遅れをなくし、命を守るにはどうすべきか。二つの災害は今も問い続ける。
「熊本県災異誌」(熊本地方気象台編)によると、6・26水害の県内の死者・行方不明者は563人。特に熊本市の被害は大きく、阿蘇地域に激しく降り続いた雨で白川が増水し、市街地が濁流にのまれた。国土交通省の記録では、白川流域7市町村の死者・不明者は422人としている。
「まさか白川が氾濫するなんて思わなかった」。白川が子飼橋付近で左岸を破り、200人以上が犠牲となった熊本市の大江地区。田尻康博さん(79)は70年前の記憶を克明に語る。
■「水は来ない」
その日朝から白川は増水していたが「ここまで水は来ない」と、自宅で弟と遊んでいた。夕方、玄関土間が浸水。母親らと避難先の小学校に向かったが、用水路からあふれた水に足を取られ流された。とっさに電柱から地面に張られた支線につかまって助かった。
白川の濁流は一気に家々を押し流した。「洪水の危険性を知らず、家の中で雨がやむのを待つ人が多かった」と田尻さん。当時は平屋の家が多く、近所の2階建てに身を寄せる人はいたが、もっと安全な場所に避難するという危機意識は薄かったとみられる。
本荘地区の松島靖さん(88)は増水した白川を見に行き、腰まで水に漬かって家に戻ったことを覚えている。「今になって考えると恐ろしい」
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