【連鎖の衝撃 経済編⑦】倒壊したスーパー 核店舗休業 商店街に影
重機がせわしなく動き、がれきの撤去が進む熊本市東区の健軍商店街。熊本地震から1カ月以上が経過した5月23日、地震で倒壊した「サンリブ健軍」の解体工事が進められていた。長年、地元の買い物客に親しまれてきたスーパーはもうそこにはない。
「店の売り上げは地震前の1割程度。商店街はこの先、どうなってしまうのか」。解体現場の隣で果物店を営む森田憲一さん(64)は表情を曇らせた。
4月14日の前震後、県内の多くの小売店が臨時休業を余儀なくされた。その後、鶴屋百貨店(熊本市中央区)のほかほとんどのスーパーや大型ショッピングセンターが、営業を再開した。
ただ、イズミ(広島市)の「ゆめタウンはません」(熊本市南区)や「ゆめタウンサンピアン」(東区)など一部の店舗は休業が長引いている。
マルショク(大分市)が経営するサンリブも熊本市の清水、くまなん、健軍、子飼の4店舗が休業中。いずれも再開の見通しは立っておらず、被害が大きかった健軍と子飼では店舗の解体が決まった。
「サンリブ健軍」は、震度7を2回観測した益城町に近い健軍商店街アーケード(全長285・5メートル)の南寄りに位置する。
本震があった16日未明、森田さんはすぐにサンリブから少し離れた駐車場に避難した。本震の19分後には震度5弱、その1分後に震度6弱の大きな揺れが連続して発生。「強い余震のたびに、サンリブの方からバリバリ、ガシャンとすごい音が聞こえた」。森田さんは恐怖の一夜を振り返る。夜が明けると、サンリブはアーケードにもたれかかるように倒れ込んでいた。
サンリブは、地上4階、地下1階の鉄骨造り(延べ床面積約7300平方メートル)。築40年以上が経過し、耐震化は喫緊の課題だった。同社は「まさに熊本市と耐震補強の協議を進めていた途中で、地震が起きてしまった」と悔やむ。
スーパーなど大型店の耐震に詳しい熊本大工学部建築学科の山成實教授(61)は「1981年の新耐震基準より前に建てられた建物は地震に弱い傾向がある。スーパーを含め倒壊したときの影響が大きい大型建築は、強度を高めていく努力がより求められる」と指摘する。
健軍商店街の2014年度の平日の通行量は6千人を超える。58店でつくる同商店街振興組合によると、そのほぼ2人に1人がサンリブでの買い物目当てだった。
サンリブの周囲は地震後間もなく立ち入り禁止となり、通りは40日近くにわたって完全に分断された。現在は行き来できるものの、同組合理事の釼羽[みわ]逸朗さん(64)は「地震後に休業していた店も多くが再開したが、人通りは普段の2~3割にとどまっている」と話し、サンリブ休業の影響の大きさを憂う。
サンリブの倒壊に伴い、2年前に改修したばかりのアーケードも屋根や支柱が壊れた。同組合は早急に補修工事を始める予定だ。サンリブの解体後についてマルショクは「新店舗を建てるかどうかは未定」とする。
核店舗の閉鎖がアーケード街全体に暗い影を落とす中、「新しい商店街をつくっていくつもりで、前を向くしかない。数年後でもいいから、サンリブが再出店してくれることを信じている」と釼羽さん。希望は捨てていない。(宮崎達也)
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