【連鎖の衝撃 避難編②】 支援混乱、不満と不安 難しいニーズ把握/破綻した物流網 住民「共助」の活動も
4月16日午後、熊本市役所。市災害対策本部で、各区の避難所の現状が報告された。「水がなく、用意されたカップ麺が配れなかった」「トイレの数が全然足りません」-。
前震と本震、2度の激しい揺れに見舞われた市内では、数日間、物資配布など支援の現場も混乱していた。
「家族でおにぎり1個しかもらえなかった」。配給の様子をインターネットの会員制交流サイト(SNS)に書き込む人もいた。情報は瞬時に駆け回り、食料が配られた避難所と、配られなかった避難所の存在を明らかにした。公平であるべき支援の“格差”に、市民は不満や不安を募らせていった。
◇ ◇
市内の避難者数は17日、把握できただけで10万8千人を超えていた。市地域防災計画の想定の約2倍。指定避難所171カ所以外の場所や車中泊の避難者数は、調べる手段もなかった。
物資を求める声から把握した避難所数は最大253カ所。市は全職員を市役所に招集して配置を決める予定だったが、職員も被災して安否確認もままならず、全避難所に職員を配置できなかった。
避難者のニーズ把握は困難を極めた。「夜だけ身を寄せる人も多く、昼夜で大きく人数が変わる。周辺で車中泊をして、物資を取りに来る市民もいる。必要な量がつかめなかった」と西区の担当課。
物流網も破綻した。うまかな・よかなスタジアム(東区)に物資を集積し、各区の配送拠点を経て避難所に届ける方式が原因だった。搬入・搬出の人手不足の上、建物や道路の被災で幹線道路も渋滞。配送車両も不十分で、おにぎりが夜中に届いたところもあった。
市職員は必死に走り回っていたが、対応は後手に回った。20日から、全国の政令市職員300~600人が応援に入った。避難所の物資管理や情報伝達など役割を分担、自衛隊が各避難所から上がる伝票を基に物資を配送するようになり、ようやく態勢が整った。大西一史市長は「各避難所近くに住む職員が、いち早く開設と状況把握にあたるようにしておかなければならなかった」と悔やんだ。
◇ ◇
極限状態での集団行動を強いられる避難所内では、住民による「共助」も不可欠だった。一般社団法人「減災・復興支援機構」の木村拓郎理事長は「住民が中心になって運営本部をつくり、要望を集約すべきです。個別の対応に追われていたら、行政は機能しなくなる」と指摘する。
中央区の一新小では、本震直後に校区自治協議会や学校関係者などが対策本部を立ち上げ。物資や炊き出しを管理し、地元の医療機関と連携して健康管理も担った。校区自治会連合会長の宮本茂弘さん(68)は「自分たちの地域は自分たちで守らなければという一心だった」と振り返る。(石本智、小野由起子)
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