オフィスは不要、スマホで完了 夫婦で移住、大阪から氷川町へ

熊本日日新聞 | 2021年01月24日 16:00

氷川町の立神峽里地公園で、それぞれの仕事をこなす番匠雄一郎さん(右)、麻樹さん夫妻。スマートフォン一つでできるという=昨年12月、氷川町

 昨年12月初めの立神峡里地公園(熊本県氷川町)。悠々と流れる川のほとりで、番匠雄一郎さん(44)と麻樹さん(35)夫妻がそれぞれのスマートフォンで、仕事で扱う商品の出荷指示や収支管理などを行っていた。業務はスマホ一つで完了。夫妻は別々に事業を営むが、オフィスはなく、同町の自宅や外出先などで仕事をこなす。

 夫妻は昨年8月、大阪から麻樹さんの実家がある同町に移住した。大阪出身の雄一郎さんは介護用衣類の卸業を経営。麻樹さんはフィリピンのオーガニック商品やフェアトレード商品のネット販売などを手掛ける企業「Girls be Ambitious」(ガールズ ビー アンビシャス)の代表だ。

 麻樹さんは大阪・寝屋川市にオフィスを借りていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて解約。会社は登記上、氷川町に移転した。「通勤時にもコロナの感染リスクに神経を使い、疲れてしまった」と振り返る。

 事務所があると顧客に会いやすく、事業拡大にも有利だと考えていたが、フィリピンの農家への出荷依頼や顧客とのやりとりは電話やメールが中心で、「オンラインでも十分できる」と気付いた。

 商品開発を手掛けてきたプロジェクトチームのメンバーは、東京など全国を拠点にリモートで業務を続けている。オフィスの家賃や光熱費などが不要になり、事業に回せる資金が増えたほか、「オフィスに帰ることを気にせずに動けるメリットは大きい」と言う。

 雄一郎さんもコロナを機に働き方を変えた。以前は福祉施設などへの訪問販売が中心だったが、感染拡大で施設に立ち入れず、仕事がスムーズに進まなくなった。

 「自分はなんて無力なんだ」と悩む中で熊本を訪れ、「湧き水をボーッと眺めたり、イノシシやシカの出現に驚いたり、毎日が新鮮で楽しい。ここには自分の人生を完結させる全てがあると思った」。移住後は「午前中は仕事をしない」と決めるなど、自分のペースで仕事を続けている。

 コロナを機にテレワークが浸透したことで、オフィスの解約や縮小、地方移転を考える企業が増えている。国土交通省が昨年公表したアンケート結果では、東京都内の上場企業約2千社の26%が本社部署の縮小や地方などへの移転を検討していると答えた。

 ツイッター社は昨年5月、国内拠点を含め、希望する社員は「永久に」在宅勤務を続けられるようにすると発表。富士通も同7月、国内の社員の勤務形態はテレワークを基本とし、オフィスの総床面積を2022年度末までに50%に削減すると発表した。

 番匠さん夫妻はオンラインだけでの仕事に不安もあったと言うが、やってみると「何の問題もなかった」。麻樹さんは「仕事の仕方をより工夫するようになったし、心と体のバランスを大切にできるようになった」と語る。

 雄一郎さんは海外への事業展開も考えており、この先もずっと氷川町に住み続けるかどうかは分からない。2人は「どこにいても仕事ができる時代。場所の制約を受けず柔軟に働き、生きていきたい」とうなずき合う。(平澤碧惟)

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