大観衆に心揺さぶられた「10・23」 ロアッソ、30日にPO1回戦 ホーム応援に再び期待<WEBコラム・赤馬のキセキ>
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「10・23」-。熊本市のえがお健康スタジアム5階の記者席から見える景色に心揺さぶられた。J2ロアッソ熊本が横浜FCと対戦したリーグ最終戦。歴代2位の2万1508人が集まったホームスタジアムの迫力と、J1昇格クラブから3点を奪ったチーム力。ロアッソは可能性にあふれていた。
勝てば、初めて臨むJ1参入プレーオフ(PO)1回戦のホーム開催を、自力で決められる一戦。また、日本サッカー界のレジェンドMF中村俊輔の引退試合とも重なり、前売り券は初の完売。試合前から会場周辺は熱気に包まれた。入場待ちの列は、スタジアム前から陸橋を越え、隣のパークドーム熊本の外周を2周しても伸び続けた。
開場が30分繰り上がると、続々と席が埋まった。今季のホーム平均入場者は前節の第41節時点で3千人台。巨大な「えがスタ」は空席が目立ち、「こんなに面白いサッカーをしているのに」と、いつも悔しかった。練習取材でも「応援してもらって本当にありがたい。だけど、もっと多くの人にスタジアムに足を運んでほしい」と話す選手の本音も耳にした。だが、この日は違った。普段は記者席正面にくっきりと見えるバックスタンド側の「KUMAMOTO」の文字が、すぐに見えなくなった。
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来場者の多くはロアッソのTシャツやレプリカユニホーム、グッズを身に着け、巨大な赤い塊のようだ。これだけの観客が集まったのは〝俊輔効果〟もあっただろうが、シーズン最終節まで上位争いを繰り広げた大木武監督率いるチームへの期待の表れでもあったと思う。大観衆が思いを込めた試合前の応援歌「HIKARI」を聴き、目頭が熱くなった。
イレブンもサポーターの期待に応えた。開始から連動した動きで積極的に圧力をかけ、相手GKのパスをカットしたFW杉山直宏がミドルシュートを冷静に決め先制。1-1の後半、立て続けに2点を奪った攻撃は相手守備を完璧に崩した。
勝ち越しの場面は、DF菅田真啓のロングボールで相手守備の裏を突いたFW坂本亘基が1人をかわした後の折り返しを、FW杉山が流し込んだ。2分後にはMF河原創主将のスルーパスを受けたFW髙橋利樹がGKの頭上をふわりと越す技ありシュート。FW平川怜から、杉山、DF黒木晃平、河原と中央からサイド、サイドから再び中央とテンポよくパスをつなぎ、相手に何もさせなかった。
その後に3失点し、課題も露呈したものの、日本中が注目した一戦でロアッソの強さの一端を示した。試合後会見で指揮官は「(横浜FCとは)大差はない」と言い切った。

5位大分も敗れたため、4位を維持したロアッソは、30日のPO1回戦をホームで迎える。大分との対戦成績は今季1勝1敗。応援でも、隣県から多数の来場が予想される。厳しい試合をものにするには、多くのサポーターの力が必要だ。
2008年にJリーグに参戦したロアッソにとって、初の「ポストシーズン」。J1昇格へ三つの大きな関門が待つ。試合後のセレモニーで大木監督は大観衆に呼びかけた。「シーズンはまだ終わっていません。あと3試合残っています。今日見ていただいたように、あとほんのちょっとで勝てません。みなさんの力を貸してください。ぜひお願いします」。PO1回戦のチケットは26日10時発売だ。(後藤幸樹)

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熊本市出身。早回しの歌に乗せた形態模写やデフォルメの効いた顔まねでデビューして45年。声帯模写も身に付けてコンサートや座長公演、ドラマなど活躍の場は限りなく、「五木ロボ」といった唯一無二の芸を世に送り続ける“ものまね界のレジェンド”です。その芸の奥義と半生を「ものまね道」と題して語ります。