熊本より福岡に就職したい? 華やか、便利…大学生の本音

熊本日日新聞 | 2022年6月29日 22:11

熊本学園大就職課が配布した「就活手帳」に目を通す学生。履歴書の書き方などをまとめている=6月下旬、熊本市中央区の同大

 熊本の課題は何か─。熊本大に通う20代の女子学生は、熊日が実施した参院選アンケートに「同級生で熊本県外に就職する人が多い気がする」と指摘した。若者の県外流出は以前からの課題であり、未来を託す1票の選択基準にもなりそうだ。「SNSこちら編集局」(S編)取材班は、熊本にとって〝ライバル〟とも言える隣県の福岡を就職先に選んだ若者たちの本音に迫った。

 熊本市出身の男性(22)=福岡市中央区=は、熊本大を卒業し、今年4月から福岡市のベンチャー企業の広告代理店で働き始めた。学生時代から年10回ほど遊びに行っていた福岡市を身近に感じていて、街の華やかさのほか、交通や買い物など利便性の高さにひかれた。

 月1回は帰省するほど熊本への愛着は強い。しかし県内企業の採用試験は受けなかった。人生においては仕事重視という男性は「熊本に魅力的な企業があれば、今なら選択肢になるかもしれない」と話した。

 熊本大4年の女性(22)=熊本市北区=も、福岡県内に事業所がある不動産仲介業者に就職を決めている。

 4人きょうだいの末っ子で、上の3人は熊本で就職した。長男と長女には既に子どもがおり、家族で協力して子育てする姿を見ていると県内にとどまる利点も感じた。それでも、県外暮らしへの憧れが勝ったという。「私の場合、どんなに魅力的な企業があっても、やっぱり県外で暮らしたい気持ちが勝ると思うな」

 少しの差が、若者の背中を押す場合もあるようだ。

 「県外就職に強いこだわりがあったわけではない」と話す熊本県立大4年の女性(21)=熊本市北区=は、福岡市の建設会社に就職予定だ。大学進学は県内「一択」だったが、就職活動では福岡や佐賀の企業も視野に入れた。今年4月には就職先を決めたが、その時期、インターンシップに参加した熊本県内の企業はまだ選考を始めていなかった。

 地下鉄など交通インフラが整備された福岡。女性は「通勤時にひどい渋滞に悩まなくて済むと考えると、熊本を離れる喜びも正直ある」と複雑な胸の内を明かした。

 大学ごとの〝カラー〟もあるようだ。熊本大就職支援課によると、同大には九州各県から一定数の学生が入学するため九州全体を地元と捉える雰囲気があるという。一方、熊本県内出身者が8割近くを占める熊本学園大では、毎年6割以上の学生が県内就職を選ぶ。

 県が作成した人口ビジョンによると、2020年3月に県内の大学を卒業して就職した4611人のうち、県外就職は56・7%の2616人。県内の高校を卒業して就職した3952人のうち県外就職は1528人で、県外就職率38・7%は全国で6番目に高い。

 参院選アンケートで課題を指摘した熊本大の女子学生は福岡県出身だが、熊本県内に絞って就職活動し、内定を得た。若者の県内定着に向けて「地域に根差しつつ全国的にユニークな事業に挑戦する企業を支援する施策がほしい」と注文した。(岡本遼) 

◆熊本県も若者の県内定着に躍起

 熊本県も若者の県内定着に躍起だ。県労働雇用創生課は例年冬に開いていた大学生や保護者らを対象にしたインターンシップ説明会を、今年は7月に早める。

 2024年度卒の学生から、インターンシップでの評価を企業が採用選考に利用できるようになり、就職活動の早期化が見込まれるためだ。同課は「大企業は以前からインターンで有望な学生を早めに見定める機会を持っていた。中小企業が多い地方が後れを取るわけにはいかない」と力を込める。

 県商工政策課は、東京、大阪、福岡に構えた「県UIJターン就職支援センター」の求職登録者を対象に、県内企業の採用試験などで発生する交通費を、居住地に応じて1万~3万円助成する事業を本年度から始めた。センターの登録者は今年3月末時点で1096人、企業は667件。新型コロナ禍でも対面での採用活動を望む県内企業は多く、移動時の経済的な負担を減らして人材を呼び込む狙いがある。(岡本遼)

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