「まさに地獄」 熊本県内の農家、飼料・肥料高騰で悲鳴 食料自給率向上の具体策を 参院選2022

熊本日日新聞 | 2022年6月28日 07:56

豚に与える配合飼料を手にする養豚農家の男性。飼料は奥のタンクに保管している=菊池市

 ウクライナ情勢や急速な円安を背景に、飼料や肥料といった農業資材の記録的な高騰が続いている。農産物の価格は上がらず、コストだけが膨らむ現状に、生産者は「もう限界だ」と悲鳴を上げる。コロナ禍から続く苦境の中で迎えた参院選。農家は候補者や各政党が訴える「食料自給率向上」の具体化を待ち望む。

 「利益が出ないまま、餌代だけがどんどん上がる。まさに地獄です」。熊本県菊池市旭志麓で豚9千頭を飼育する男性(45)の苦悩は深い。

 餌の配合飼料は原料のトウモロコシの実や大豆かす、麦などをほぼ輸入に頼っており、価格が右肩上がりに上昇。子豚が生まれて出荷するまで6カ月間にかかる餌代は、2020年に1頭当たり約2万2千円だったのが、22年は1・5倍の3万3千円に上昇。22日にはJA全農が7月からの値上げを発表し、今後さらに跳ね上がる見込みだ。

 一方、豚肉の取引価格は、ほぼ平年並みで推移。男性は「餌の変更は肉質に影響するし、成長が遅れて出荷サイクルが狂う恐れもあるため簡単にはできない。これほどの値上がりは経験がなく、経営努力でカバーできる次元を超えている」と国レベルでの支援を訴える。

■輸入頼み

 農林水産省によると、飼料の国内自給率は25%(20年度)。配合飼料のベースとなる「濃厚飼料」は12%にとどまり、多くを輸入に頼る。国内生産が可能な牧草や稲わらを原料とする「粗飼料」は自給率76%だが、家畜の餌には炭水化物やタンパク質が豊富な濃厚飼料も不可欠で、自給率アップには限界がある。

 菊池市旭志新明で乳牛約200頭を飼う男性(53)は、地域の酪農家と一緒に粗飼料の自家生産に取り組んでいる。それでも「自給できるのは50%が精いっぱい。配合飼料を使わないと生乳の量や品質を維持できない」と言う。年間の餌代は2年前と比べ700万~800万円増えた。

 コロナ禍の需要減で生乳価格は低迷を続ける。男性は「消費者に迷惑をかけたくはないが、乳価が上がらないと酪農経営はもたない」と苦しい胸の内を語る。

配合飼料を食べる豚。水を加えてペースト状にして与えている(養豚農家の男性提供)

■94%上昇

 さらに、野菜や果樹、コメなど多くの農家を悩ませるのが、化学肥料の大幅な値上がりだ。リン酸アンモニウムや塩化カリウムといった原料が主産国であるロシアや中国の輸出制限の影響で品薄となり、JA全農は6~10月に販売する肥料を最大94%値上げした。

 「土壌作りに肥料を使う夏場に、値上げが直撃した」。玉名市でイチゴを栽培する男性(58)はため息をつく。春まで続く収穫期も肥料を追加するといい、「収量低下につながるため肥料は減らせず、冬場はハウスの加温に使う燃油も削れない。水や温度管理の工夫で収量を伸ばすしかない」と身構える。

 政府は21日、化学肥料の使用を低減する農家に、肥料価格の上昇分を補塡[ほてん]する支援金を創設すると発表した。男性も施肥計画の見直しを検討するが、「堆肥の活用や有機農業の導入には時間がかかる。農家にとっては今を生き延びられるかどうかの問題だ」と即効性のある対策を求める。

 世界的な食料危機が懸念される中、参院選の各党公約には、農業用資材を含む物価対策に加えて「食料自給率向上」の文言が並ぶ。

 養豚農家の男性は訴える。「このままでは日本の農家はつぶれてしまう。国が本気で食料自給率を上げたいのであれば、一過性の支援にとどまらず、農家が安定的に生産を続けられる仕組みづくりを真剣に考えるべきだ」(中尾有希)

2022参院選くまもと

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