カラフルな道路舗装、何でこの色に? 熊本県独自の統一基準 視覚的に注意喚起、安全守る

熊本日日新聞 | 2022年4月17日 08:30

松橋中学近くの横断歩道周辺に施されたカラー舗装。信号機はないが、視覚的に注意喚起して通学路の安全確保を目指している=宇城市松橋町

 近年、よく目にするようになったカラフルな道路舗装。熊本県宇城市の元会社員の男性(67)が「SNSこちら編集局」(S編)に「従来の白塗りではなくカラー舗装を施すのには何か基準があるのでしょうか?」と写真とともに疑問を寄せた。

 写っていたのは宇城市の松橋中学近くの県道。現地を訪ねると、横断歩道が緑と白に塗られ、手前の車道も赤茶色っぽく舗装されていた。周囲はなだらかな坂道で、信号機はなかった。

 整備した県宇城地域振興局によると、車の運転手の視覚的な注意を促して通学路の安全を守る狙いという。「県警で信号機を設置するのが理想だが、コスト面などもあってハードルが高い」。カラー舗装なら費用は400万円程度。信号機を新設する場合より数百万円安く済むという。

 ただ、いくらカラフルに目立たせるためとはいえ、場所によって色や表示がばらばらでは運転手も歩行者も混乱してしまう。そこで国土交通省や県、県警や熊本市は2020年3月、カラー舗装に関する熊本県独自の統一基準を策定した。

 統一基準では、赤茶の弁柄[べんがら]色を「注意喚起」「案内誘導」「通行位置明示」と幅広く使用することに。青と緑は案内誘導や通行位置明示に使い、その他の色を使う場合は関係機関で協議することにした。統一基準では、目的や場所に応じた舗装パターンも示している。

 県は統一基準に基づき、ことし3月末までに県内104カ所の県管理道路にカラー舗装を施した。これまでは豪雨災害からの復旧が優先だった八代や芦北、人吉地域でも今後、通学路などでのカラー舗装を進めていくという。(岡本遼)

自転車の通行場所を示す「矢羽根」(県道路保全課提供)

 ◆矢羽根やだまし絵…デザインさまざま

 カラー舗装にはさまざまなデザインがあり、最近では目の錯覚を利用した「だまし絵」のようなものも見られるようになった。

 道路に青で表示された矢の羽根のようなマークは「矢羽根[やばね]」。自転車の通行場所を示している。

 県は3月末までに天草や球磨地域の約200キロで施工を完了。2024年3月末までに県内全域計350キロまで広げる計画だ。県内各地では“自転車熱”もじわりと高まっており、県道路保全課は「車と自転車の安全確保に加えてサイクリングコースの周知にも役立てたい」と意気込む。

 熊本市内でも中央区の藤崎宮前交差点付近や大江渡鹿交差点付近など数カ所に導入されている。市自転車利用推進室は「幅が狭い場所でも自転車の通行位置を知らせるのに有効な手段だ」と説明。自転車の利用促進が交通渋滞の緩和につながるかも注目だ。

 宇土市の市道には平面の図形を立体的に見せる「イメージハンプ」がある。障害物があるように見せて、車の減速を促す。通学路にある交差点など市内数カ所で採用している。

 1996年に大阪府警と共同でイメージハンプを開発した積水樹脂(大阪府)によると、大阪府内の2地点で施工前後の4カ月を比較したところ、事故件数が半数近くまで減ったという検証結果もある。

 イメージハンプは県内ではまだ珍しい。熊本市道路保全課によると、同市内では南区の田迎西小学校近くで見ることができる。(岡本遼)

平面の図形を立体に見せかけ減速を促す「イメージハンプ」=宇土市

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