復興住宅、選べない 住民希望地に建設予定なし 熊本豪雨被害の八代市坂本町

熊本日日新聞 | 2021年12月03日 11:38

八代市坂本町の住民を対象に開かれた災害公営住宅に関する説明会=6月、同市の旧パトリア千丁

 昨年7月の豪雨で甚大な被害が出た熊本県八代市坂本町に建設予定の災害公営住宅(復興住宅)。市は11月初めに建設地5カ所を発表したが、一部の町民が建設地にない西部[さいぶ]地区を希望していることが、住民自治組織の調査で分かった。市は、どこに入居するか、3日までに申し込むよう求めているが、「選びようがない」と戸惑う人たちがいる。

 市は3~4月に半壊以上の全世帯にアンケートし、建設地を絞り込んだ。7月末までに希望地についての仮申し込みも実施し、約35戸の建設を決めた。藤本・大門と坂本両地区に各10戸、中津道、合志野、荒瀬各地区にそれぞれ5戸程度としている。

 一方、町の住民代表らでつくる住民自治協議会は9月末、市内の仮設住宅(みなし仮設含む)で暮らす92の被災世帯に独自に聞き取り調査。災害公営住宅に入居を希望とした29世帯のうち、9世帯が西部地区と答えた。これは坂本地区を希望した世帯と同数で最も多かった。

 大門地区の自宅が大規模半壊し八代市街地のみなし仮設住宅に住む女性(71)は、市がアンケートした時点では市街地の市営住宅への入居を考えていたが、その後、古里へ帰りたくなり災害公営住宅を希望。「市街地に最も近く、病院通いもしやすい西部地区が良いと思った」が、仮申し込み時に示された5カ所には含まれておらず、入居地区は未定と答えたという。「今のままでは選びようがない」と、入居申し込みができずにいる。

 市内の仮設住宅で暮らす男性(74)は西部地区の自宅が大規模半壊した。「思い出がたくさん詰まった地元に、災害公営住宅が建設されるのなら迷わず希望した。ほかの災害公営住宅に入る考えはなく、八代市街地で住む場所を探す」と打ち明ける。

 同協議会によると、「5月ごろから西部地区に災害公営住宅を造ってほしいという声を聞いていた」。ところが、市は6月に「西部地区を希望した人はいなかった」と説明。違和感を覚えてアンケートに踏み切った同協議会復興推進部会副部会長の松嶋一実さん(74)は、「どうすればいいか分からず、困っている人がいる」と話す。

 これに対し、市住宅課は「現時点で西部地区への建設は考えていない」との姿勢だ。理由として、建設予定地を追加すると用地の交渉・確保や、土砂災害、浸水想定などの調査に時間がかかり、予定している5地区の建設が遅れることを挙げ、「必要であれば市営や公営など別の方法で建設を検討する」としている。

 申込期限まであと1日となった2日現在で、申し込みを済ませたのは22世帯。想定した35世帯を13世帯下回っている。松嶋さんは「市の復興計画では『ひとりも取り残さない安心なまちづくり』を掲げている。西部地区への建設を希望する人が1人でもいる限り、対応してほしい」と訴える。(緒方李咲)

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