コロナ禍の消毒「私には地獄」 化学物質過敏症の男性苦悩

熊本日日新聞 | 2020年12月20日 08:50

化学物質過敏症に苦しむ今村さん。コロナ禍で広がる消毒の習慣が、当事者にとっては「地獄」と話した=熊本市

 「スーパーでも一瞬目まいがするほど、どこに行っても消毒の臭い。コロナ禍で、消毒地獄です」。化学物質過敏症(CS)を患う今村りょうさん(41)=熊本市=は、寒風が吹く同市中央区の河川敷で告白した。この日の最高気温は8度だったが、室内では建材や他人の衣服に付いた化学物質が原因で症状が出やすいため、屋外で会った。

 初めて会った11月、事前に注意事項を渡された。柔軟剤を使っている人は衣類を前日までに40度のお湯で2回洗い直す、洗髪後のコンディショナーは入念にすすぐ、当日朝は整髪料を使わない…。取材当日はうっかり整髪料を付けていたため風下に座ることにした。

 化学物質過敏症は香料や洗剤、建築資材などに含まれるごく微量の化学物質に過敏に反応し、頭痛やめまい、吐き気、思考力の低下などが起きる病気。診断・治療する医療機関が少ない上、周囲に理解されにくく、患者は孤立しがちだ。

 今村さんは幼少期からCSの傾向があり、農薬やペンキ、教室の床に塗るワックスでも気分が悪くなった。長年勤めていた会社は体調を崩して6年前に退職。当時扱っていた薬品が原因とみているが、その後もさまざまなものに反応するようになり、睡眠も取れないほど重症化した。

 極めて制約された生活に追い打ちをかけたのがコロナだった。外出時は排ガスやたばこの煙に暴露しないようマスクは必需品だが、真っ先に不足した。備蓄で何とかしのいだが、CSの仲間には手に入らない人もいた。そして消毒。消毒用アルコールで症状が出る人もいるが、今村さんは次亜塩素酸が使われた場所には近づくこともできないという。

 コロナの感染拡大防止のためこれまでになく衛生意識が高まり、季節性インフルエンザも格段に減った。一般的に広がった消毒の習慣は否定されるはずもない。そんな思い込みから「コロナで消毒天国ですね」と軽口をたたくと「地獄ですよ」と今村さんに返された。見慣れた風景の色が、反転したような瞬間だった。

 2015年に当事者や有識者で「くまもとCSの会」を立ち上げ交流や情報発信をしてきた今村さん。「この病気は年齢性別を問わず、誰でも突然発症する可能性がある。CSを広く理解してもらい誰もが暮らしやすい社会になってほしい」

 2人で帰路に就いたとき、今村さんが突然道路を横断した。前方に小学生の集団がいたからだという。「子どもの制服は柔軟剤を使いがちだから」。その行動に改めて、病気の困難さを痛感した。(福井一基)

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