新型コロナ、「生存権」脅かす きょう憲法記念日 生活困窮者、県内で増加

熊本日日新聞 | 2021年05月03日 07:20

メーデーに合わせ県労連などが開いた生活困窮者向けの物資配布=1日、熊本市中央区

 1年以上にわたって人々の健康と暮らしを脅かす新型コロナウイルス。有識者によると、支援のセーフティーネットからも漏れ、「生存権」を保障する憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことが難しくなった生活困窮者が熊本県内でも増えている。3日は憲法記念日。

 1日のメーデー。集会に合わせ、県労連などが熊本市中央区の白川公園で開いた困窮者向けの食料配布には、約50人が並んだ。

 近くの60代の女性は障害がある70代の夫と2人暮らし。「コロナで飲食店のアルバイトのシフトが減った。年金と月数万円のバイト代でのやりくり。本当に助かる」と米や野菜を受け取った。県内では、困窮者や学生を対象にした物資配布会に毎回大勢が列を作る。

 コロナによる困窮者対象のセーフティーネットの一つとして、県社会福祉協議会は、特例の緊急小口資金を無利子で貸し付けている。上限額は20万円。2月25日までに申請1万3168件のうち、89・6%の1万1804件を承認した。しかし、県央の60代の男性運転手は「コロナで手取りは月7、8万円まで減った。脚が悪い妻ら家族が5人いる」と2度申請したが、2度とも不承認。男性は熊本地震で被災した際、借りた特例貸し付け10万円を返済していないことが不承認の理由だと推測している。

 4月9日、男性は支援者の熊本学園大の高林秀明教授(地域福祉論)らと県社協を訪れた。不承認の理由を聞いたが、「個別の理由は言えない」。男性は生活費のため借金を繰り返し、電気や水道が止まったこともあり、「10万円の一部すら返す余裕はなかった」と表情を曇らせた。

 高林教授によると、男性は働いても困窮状態にある「ワーキングプア」。生活保護の選択肢もあるが申請をためらっている。「保護を受ければ、今の家を手放さなければならない可能性があり、さらに生活が不安定になる」との懸念からだ。

 県内の生活保護の申請件数は、新型コロナの感染拡大が顕在化した2020年は3362件で、19年の3437件より減ったが、県社会福祉課は「国の給付金など、生活支援策拡充の影響ではないか」とみる。

 一方、困窮者の相談窓口となる県内の生活自立支援センターへの新規相談件数は20年度、2月末時点で8196件。前年度の約2・5倍に急増した。

 厚生労働省は2月、親族に援助ができるかどうかを確かめる「扶養照会」の弾力的運用などにより、生活保護を受けやすくするための通知を出した。

 ただ、高林教授は日本の生活保護について「海外と比べて要件が厳しい。周囲の冷ややかな目を恐れ、申請を断念する人もいる」と指摘。「困窮者の救済とともに、中間層の雇用と収入を支えて社会保障の財源を確保しなければ、日本の貧困問題は解決しない」と警鐘を鳴らした。(隅川俊彦)

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