「中国料理人」の信念つづる 元ホテルキャッスル料理長・社長の斉藤さんが自伝出版
熊本ホテルキャッスル(熊本市中央区)で44年にわたり料理長や社長を務めた斉藤隆士さん(82)=東区=が、自身の歩みを振り返った「ありがとう中国料理 ゆかいな人生」(熊日出版)を自費出版した。熊本を「四川料理の拠点」に育て上げた斉藤さんが、多彩なエピソードを交えながら、料理人としての信念、後輩料理人たちへの思いなどをつづっている。
料理人仲間などに「面白い人生だから本を出してみたら?」と勧められ、出版を決めたという斉藤さん。高校中退して料理の世界に飛び込み地歩を固めるまでや、人気テレビ番組「料理の鉄人」での〝対決〟、異色の経営者としての経験、故アントニオ猪木さんや故高倉健さんら著名人との親交など全5章にまとめた。
斉藤さんは1942年、大分県竹田市で5人きょうだいの三男として誕生。高校2年生の夏休みに家出し、東京で生まれて初めて食べたギョーザに衝撃を受ける。「料理人になりたい」と東京で中国料理の世界に入っていた長兄に相談。「四川飯店」を紹介され、のちに日本で「四川料理の父」と呼ばれる故陳健民さんと出会った。
当時の四川飯店では中国人か中国にルーツを持つ人だけを採用していたが、面接に応じた陳さんはその場であっさり了承した。「OKが出た理由は今でもよく分からないけど、たぶん運がよかった」。その後の9年間、両親とも会わず、懸命に中国料理人としての経験を積んだ。
75年、熊本ホテルキャッスルにオープンした「桃花源」の料理長に就任。当時のホテルでは和食や洋食のレストランが主流だったが、本格中国料理で勝負し、看板レストランに育て上げた。2003年には社長に抜てき。当初は固辞したが、「〝白衣の代表〟として社長を務めようと腹をくくってからは、料理人の聖域である調理場を大きく変えるなど中国料理人風の改革でできるだけ無駄を省いた」。19年に退任するまで、累積赤字の解消や熊本地震からの復活に奔走した。現在は、日本中国料理協会の顧問として後進の指導や育成に気を配る。
「人生は〝出会いと運〟。自分の一番の幸運は陳健民さんに出会えたこと。人はその瞬間瞬間は〝運〟に気付くのは難しいかもしれない。でも、出会いを大切にすることで人生は面白くなる」と斉藤さん。最後に「中国料理人になってよかった」と目を細めた。
A5版、236㌻。2千円。(東有咲)
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