自然の中で学び支え60年 国立阿蘇青少年交流の家 体験企画に力、家族利用もOK
阿蘇市の国立阿蘇青少年交流の家は今年、開所60周年を迎えた。静岡県御殿場市の施設に次ぎ、1964年に全国で2番目に設置された国立の社会教育施設で、さまざまな自然体験や集団宿泊ができる。阿蘇世界ジオパークのガイドを体験する講座や、ASO一周100キロチャレンジキャンプなど、小中学生らを募った企画も充実。阿蘇の特色を生かし、青少年の健全育成に取り組んでいる。
阿蘇・高岳の裾野、小堀牧野に囲まれた16万平方メートルの敷地を、市から借りて運営。グラウンドや体育館、テニスコートのほか、研修室や食堂などを備え、最大400人が宿泊できる。主に小中高校や大学、企業の宿泊研修で使われている。
2018年度に10万人を超えていた熊本県内外からの利用者は20年度、新型コロナウイルス禍で約2万2千人に減少。コロナ禍が落ち着いた23年度は約8万2千人まで回復した。牛田卓也所長は「コロナ禍を経てデジタル化が進む中、人とコミュニケーションを取って自然の中で学ぶ重要性は増している。良質でリアルな体験ができる環境を提供したい」と話す。
地元小学生向けの草原学習では、野焼きの準備作業体験から、本番の見学までを味わえる企画を用意。水の学習企画では社会人のニーズも見込む。川の源流まで登山し、「水基」と呼ばれるカルデラ内の豊富な湧き水が注ぐ水場を訪問。職員が安全指導をし、団体の引率者をサポートする。
重点課題の一つは利用拡大だ。牛田所長によると、教員が多忙で行事が減り、集団宿泊研修をやめた学校もある。燃料高や運転手不足で「バスが確保できない」として、研修を諦めるケースもあるという。
家族や友人グループでも施設を使えることはさほど知られておらず、牛田所長は「2人以上なら誰でも利用でき、年齢制限もない」と強調。県立学校の児童生徒が平日に学校を休める「くまなびの日」に、家族で利用してもらう提案も始めた。
一方、施設の老朽化は進み、維持管理費が増える中、国からの運営費交付金は縮小している。阿蘇では、職員が着るポロシャツに支援企業の広告を入れる取り組みを始めた。クラウドファンディングや、広場のネーミングライツも取り入れ、自主財源確保へ知恵を絞る。(宮崎あずさ)
◇メモ 国立の青少年「交流の家」は阿蘇など全国に13カ所、「自然の家」は14カ所で、東京の「オリンピック記念青少年総合センター」を含む28施設を独立行政法人国立青少年教育振興機構が運営する。
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