緑川ゆきさんに第3回熊日マンガ文化賞 「夏目友人帳」妖怪との交流、繊細に描く
熊本日日新聞社は第3回熊日マンガ文化賞に、「夏目友人帳」の連載を手がけている熊本県出身の緑川ゆきさん(48)と出版社の白泉社(東京)を選んだ。
「夏目友人帳」は緑川さんの代表作で、妖怪を見ることができる15歳の少年・夏目貴志と妖怪との出会いと別れ、心の交流を繊細なタッチで描く。アニメ版には人吉・球磨地方の風景もモデルとして盛り込まれており、観光PRなどを通じて2020年の熊本豪雨で被災した人吉・球磨の復興にも一役買っている。
緑川さんは1998年、白泉社が主催する作品公募のLMS(ララまんが家スカウトコース)で「花泥棒」がベストルーキー賞、LMG(ララまんがグランプリ)で「珈琲ひらり」がフレッシュデビュー賞を受賞。同年に白泉社のマンガ雑誌LaLaで初の連載「あかく咲く声」をスタートした後、2003年LaLaDX7月号で読み切り作品として始まった「夏目友人帳」は現在、LaLaで連載中。31巻まで単行本が刊行されている。08年にはテレビアニメも始まった。
妖怪の名前を封じた祖母レイコの遺品である「友人帳」を手にした主人公が、名前を返してほしいと次々に現れる妖怪と交流しながら名前を返していく幻想的なストーリー。招き猫に姿を変え、主人公の用心棒役を担う妖怪(愛称ニャンコ先生)とのコミカルなやりとりも人気だ。田町菅原天満宮(人吉市)や雨宮神社(相良村)など、アニメに登場する場所を巡る〝聖地巡礼〟もファンの間でブームとなっている。
「公式ファンブック」(09年)の中で、緑川さんは「『人外と少年』の師弟関係が描いてみたくて」と着想のきっかけを説明。「次々客のくるような設定」として「借金取りに追い回されるような話」を連想し、「金のかわりに妖怪が返してほしがるもの」として、「名前」を返すという設定に行き着いたことを明かしている。(山本遼)
◆「愛が流れる作品」 白泉社・菅原弘文社長
栄えある「熊日マンガ文化賞」を緑川ゆき先生と共に受賞して、感激しています。「夏目友人帳」は2003年からスタートしてアニメや舞台にもなり、作品の中に静かだけれど強く流れる「愛」は、多くのファンの心を動かしてきました。とりわけ大妖怪にもかかわらずかわいい猫の姿になっているニャンコ先生はお酒が大好きで、そのユニークなキャラクターは年齢、性別、主義主張問わず皆さんから愛されています。熊本のおいしいお酒をニャンコ先生と酌み交わしながら、緑川先生の受賞をお祝いします!
◆30日に記念講演会 参加者募集
30日に熊本市中央区のホテル日航熊本である「熊日マンガ文化賞」贈呈式で、緑川ゆきさんの初代担当編集者でマンガ雑誌「LaLa」の佐藤一哉編集長の記念講演会が開かれる。インタビュー形式で、「夏目友人帳」の魅力に迫る。聴講希望者は熊日電子版「夏目友人帳」特設ページから申し込む。定員100人(先着順)。無料。
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