「通潤橋」国宝指定1年、高い人気続く 7月の観覧者、前年比3割増…駐車場不足などに課題 山都町
山都町の通潤橋は25日に国宝指定1年。熊本県外への認知度が高まり、観光客も急増。近くの商店街にも好影響が広がる。課題は駐車場不足や社会科見学予約システムの使いにくさ。白糸台地に農業用水を送る役目を果たし、誘客にも貢献する町最大の観光名所は受け入れ態勢の整備が求められている。
近くの浜町商店街一帯で7、8日にあった伝統の八朔[はっさく]祭は、昨年と同規模の3万9千人が来場。目玉の大造り物引き回しがあった8日は昨年より約2千人多く、町商工観光課は「注目度が高い状態は続いている」と分析する。
通潤橋上部の見学は2022年4月に有料化した。昨年6月に国の文化審議会による国宝の答申があり、観覧者は増加傾向。翌7月には前年の3倍となる1597人。昨年は2万4324人となり、前年の1・58倍だった。
今年は4~8月末で7990人となり、昨年の1・3倍ほどで推移。今月15日には5万人を達成した。上部を見学できるのは、田植えの時期と冬季を除く4~11月の年間100日程度。町教育委員会は「5万人達成は早かった」とみる。
浜町商店街の旅館「川萬屋」の宿泊客は昨年、前年の1・2倍となった。仕事での利用が主な客層だが、昨年から個人旅行客からの問い合わせも増えているという。店主の男性(71)は「コロナ禍前ほどとはいかないが、来てくれる人は確実に増えている」と手応えを口にする。
一方、受け入れ態勢は人気に追いついていない。3連休中日の15日昼、通潤橋前の駐車場(普通車136台、大型バス5台)は満車になった。空きを探す車や、路肩に車を止めて家族だけを降ろす人が目立った。長崎県から訪れた男性(43)は、近くの「やまと文化の森」に駐車。「役場を案内されたが見つけられなかった。町外者にも分かるような案内がほしい」と残念がった。
今年2月11日には九州中央自動車道の「山都通潤橋IC」の供用が開始。町へのアクセスが向上し、土日には通潤橋前の駐車場が不足している。町は役場駐車場(160台)を開放するが、浸透していない。
町議会でも駐車場の増設を求める声がある。ただ、町は「平日などは十分な駐車枠がある。冬季は訪れる人が減ることもあり、最大値で整備するのは難しい」と、役場駐車場への案内の徹底で乗りきる姿勢だ。
通潤橋は、小学校などの社会科見学の場としても重宝されている。町生涯学習課によると、例年9~11月には国宝指定前から県内を中心に約200校が訪れる。大型バス20台以上が集中する日があったため、本年度から1日10台までに絞ることにした。
予約方法も変更。見学時の利用が多く、別々の電話予約が必要だった町観光協会が運営する史料館と、町が管理する案内ボランティアは、バスの駐車予約と併せて町ホームページからの一括受付とした。
ただ、現在のシステムでは、予約をした学校側で内容変更ができない。町は「学校、観光協会にも使いやすいシステムが必要。町内観光施設との連携にもつながるはず」としている。(枝村美咲)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
肥後銀行、初のシード権狙う クイーンズ駅伝24日号砲
熊本日日新聞 -
1012万円の貴重なオブジェも 鶴屋で「バカラ展」 グラスやシャンデリアなど350点
熊本日日新聞 -
阿蘇市で今季初の氷点下 寒気と放射冷却で冷え込む
熊本日日新聞 -
地下水増やす森林管理 筑波大教授・恩田裕一氏が講演 「肥後の水とみどりの愛護賞」表彰式
熊本日日新聞 -
創作の秘密、老いと死を語る 伊藤比呂美さん×谷川俊太郎さん 対談集「ららら星のかなた」刊行
熊本日日新聞 -
被災者に寄り添った支援 能登、熊本地震のボラセン運営者講演 日頃から役に立つ分野想定
熊本日日新聞 -
「生まれ変わっても店の続きを」 11月末で引退する有田正博さん 熊本市中央区・シャワー通り「PERMANENT MODERN」 セレクトショップの草分け
熊本日日新聞 -
熊本市と県の体育施設、利用予約が別システムに 共同運営サイト「よやくまくん」終了へ 利用者は戸惑いも
熊本日日新聞 -
合志市商工会が地域問題懇談会 市や市議と意見交換
熊本日日新聞 -
熊本市の「宿泊税」、事務負担支援の交付金などを事業者に説明
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「家計管理」。11月25日(月)に更新予定です。