被災地の絆でピアノ復活 球磨村・渡小 兵庫の団体橋渡し、福島で修理

熊本日日新聞 | 2021年03月22日 07:20

修復されたグランドピアノと一緒に記念写真に納まる渡小の児童ら。中央の男性が福島県いわき市の調律師遠藤洋さん=21日午後、球磨村の一勝地小(高見伸)
パネルに貼られた学校行事や地域の人たちの記念写真に見入る渡小の児童ら=20日午後、球磨村の同小(小野宏明)

 昨年7月の豪雨災害で被災した熊本県球磨村の渡小のグランドピアノが、東日本大震災の被災地、福島県いわき市で修理され、8カ月ぶりによみがえった。修理の橋渡しをしたのは、阪神大震災の被災地のボランティア団体。21日、児童が仮校舎として学ぶ一勝地小の体育館でお披露目コンサートが開かれ、児童や地域住民らは、被災地をつなぐ絆で復活したピアノの音色に聴き入った。

 球磨川と支流・小川の合流点近くにある渡小は、校舎1階が水没。体育館にも濁流が押し寄せ、長年卒業式などの節目に美しい旋律を奏でてきたピアノも飲み込まれた。

 転機は昨年10月。村に支援に入った兵庫県尼崎市のボランティア団体「MOVE」の山中裕貴代表(32)が、泥まみれになったピアノを発見。「子どもたちにとって思い出深いピアノで卒業式を迎えてほしい」と村教育委員会に修理を提案。インターネットで知った、いわき市のピアノ調律師、遠藤洋さん(62)に直談判した。

 遠藤さんは2011年の東日本大震災の津波で被災した地元中学校のピアノを修理した経験がある。依頼を受けて早速、渡小を訪れてピアノを確認。「何とかしたい」という強い思いに駆られ、修理を引き受けた。

 同11月、ピアノを約千キロ以上離れたいわき市の遠藤さんの工房に運搬。約1万個の部品を可能な限り解体し、高圧洗浄機や手洗いで泥を洗い落とした。使えなくなった部品は取り換えたが、鍵盤や天屋根などはできるだけ元の部品を使用した。「根気のいる作業が続いたが、子どもたちの笑顔を取り戻したかった」と遠藤さん。

 一勝地小に届けられたピアノは、被災前の美しい黒色の光沢を帯びていた。ただ、遠藤さんは「豪雨災害を未来に伝える楽器にしたかった」と被災による傷跡や泥染みをあえて残した。

 コンサートでは、国内外で活躍するピアニストの西村由紀江さんの軽やかな演奏に合わせ、児童が校歌などを合唱。再び命が吹き込まれたピアノの音色と、子どもたちの透き通った歌声が体育館に響き渡った。コンサートの様子は、クラウドファンディングで約250万円の修復費を支出した全国の支援者にも動画配信された。

 よくピアノを弾いていたという渡小6年の佐々木美音楽[びおら]さんは「被災した時はとても悲しかったけど、再びピアノの音色を聞くことができてうれしい」とほほ笑んだ。ピアノは23日の卒業式でも演奏される。

 保護者や児童らは20日、学校行事などの思い出の写真約600枚を集めたパネル(縦・1・8メートル、横3・6メートル)を製作。コンサート会場に飾られ、花を添えた。(小山智史)

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