風俗店スカウト、客引きに注意を 人流戻る熊本市の繁華街 熊本県警など「きっぱり断って」
夏休みで学生や社会人らが帰省し、熊本市の繁華街もにぎわう時期だ。新型コロナウイルスの5類移行から1年以上がたって人流が戻る一方、夜の街では女性を狙った風俗店へのスカウトや観光客らを含む飲食店への客引きが目立つ。熊本県警や市は「絶対に相手にせず、きっぱり断ってほしい」と注意喚起し、情報提供を求める。
熊本中央署と県警組織犯罪対策課は7月下旬、県迷惑行為防止条例違反の疑いで、東京都渋谷区、自称無職の男(26)を逮捕した。逮捕容疑は、4月25日午後10時半ごろ、熊本市中央区新市街の路上で通行人の女性につきまとい、「風俗はどう、稼げるよ」などと声をかけ、公共の場所で風俗店従業員になるように勧誘した疑い。
署によると、男は女性を風俗店にスカウトするグループに所属していた。熊本市内の繁華街近くにある拠点に宿泊し、夜になると街に出て声をかけていた。防犯カメラには複数の女性に声をかける様子が写っており、組織的に動いていたとみられる。
県警によると、コロナ禍前から東京・歌舞伎町などでは組織的なスカウトが横行し、中には暴力団が関与するケースもあった。県警は5類移行後、スカウトグループが地方に進出し始めているとみて警戒を強めている。県内で風俗店へのスカウト行為による摘発は2019年が3件で、20年は2件。21~23年と今年1~6月の摘発はなかった。
中央署幹部は「スカウトグループは全国各地の拠点を転々として足取りがつかみにくい。女性側も声をかけられただけだと警察に通報しないことが多く、情報が集まりにくい」と話す。
スカウトは夜間1人で歩いている女性を狙うことが多く、「今日はお店に来なくていいから、連絡先だけちょうだい」と交流サイト(SNS)などを聞き出そうとする手口もあるという。署幹部は「しつこいから連絡先を渡して離れようと思うかもしれないが、絶対に渡さないで」と警鐘を鳴らす。
客引きや勧誘には熊本市も目を光らせる。19年施行の客引き行為禁止条例は、公共の場所で通行人らを相手にした客引きや客待ち、勧誘や勧誘待ちの各行為を禁じている。禁止区域は上通並木坂から下通、サンロード新市街、シャワー通りなど中心商店街一帯。違反には指導や警告、命令を出し、罰則として5万円以下の過料がある。
市生活安全課によると、指導は19年度79件で、20~22年度は61~71件だった。県警と合同パトロールした23年度は4件まで減ったが、24年度は7月末までに10件あった。警告は19年度に4件で、今までに命令や過料はない。
県警は県条例や風営法に基づき、客引き行為で19年に35件、20~23年に2~9件、今年1~6月に2件を摘発した。
市生活安全課は銀座通りから新市街周辺での客引きが目立つとする。「昨年と比べてガールズバーやフリーの客引きが増えている。フリーの客引きは店員のような格好をしておらず、客を連れていった店からキックバックを受け取る仕組みだ」と注意を促す。
最近は、スマートフォンの翻訳アプリを使った外国人への客引きの目撃情報もあった。市は注意喚起のチラシを5カ国語で作り、市内のホテルに配って宿泊客に注意を促すよう要請を始めた。「客引きに声をかけられても絶対に利用しないでほしい」と呼びかける。(遠山和泉、諌山美羽、松冨浩之)
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