くまもとマスク(宇城市)製造終了 コロナ禍、国産不織布の高品質マスク供給 原材料高騰で継続断念、地元住民ら惜しむ声
新型コロナウイルス感染が拡大した2020年に宇城市三角町の工場でマスク製造を始めた「くまもとマスク」が需要減などで4月に操業を終え、7月末までに撤退した。国産の不織布を使う品質の高さで信頼を集めた企業に、地元住民や町出身者からは「お疲れさま」「寂しい」などと感謝と惜別の声が上がる。
「元看護師なので、医療現場での感染予防の大変さはよく分かる。マスク不足が深刻だった時に、よく熊本県内で製造を始めてくれた」と熊本市中央区の女性(76)。三角町出身でもあり、地元企業への誇らしさからケースで買って友人らに配っていたという。「町の灯が一つ消えたような気持ち」
くまもとマスクは、ジェネリック薬品卸のジェネフィット・ジャパン(熊本市)が、医療現場のマスク不足を解消し、三角町の活性化にもつなげようと、20年5月に設立。パチンコ店だった建物を改装して工場にし、9月に製造を始めた。
医療機関から予約が相次ぎ、「利益よりも、早く作って提供しようと必死だった」と社長だった西村吉生さん(62)は振り返る。約1年後には一般販売を開始。安価な海外製品が流通し始めていたが、21年9月には医療用マスクのJIS(日本産業規格)認証を取得し、品質で他社との違いを出した。
高品質を支えたのは地元雇用の女性たちだ。耳ひもの長さ調節や1枚ずつの丁寧な検品など、人の手による過程が重要だったという。昨年9月までパート従業員だった福嶌香さん(48)=宇城市=は「フィット感や長時間付けても痛くならない耳ひもの長さなど、従業員みんなで試行錯誤した結果」と胸を張る。
会社や団体名を入れるサービスも好評だった。不知火中の元校長、上村一浩さん(62)=宇土市=は22年3月、同中のロゴを入れたマスク約300枚を注文し、卒業式に3年生に配った。「修学旅行や中学総体が中止となり、我慢が続いた時期。記念にとっておくという子もいて、うれしかった」という。
西村さんは「マスクは生活の必需品」として、新型コロナの5類移行後も製造を続ける考えだったが、原材料の高騰や製造機械の老朽化もあり断念した。「社会貢献したいという強い思いで始めたので苦しい決断だったが、一定の貢献はできたと思う。多くの人から惜しまれ、ありがたい」と話した。
工場近くにある井芹葬祭の井芹眞会長(77)は、販売開始以降ずっと買い続け、従業員や利用者に配っている。終業を知った7月下旬には大量に購入した。「客からの評価も高く、ずっと使い続けたかったのに残念。これからどこから買おうか…」と、少なくなる在庫を見つめた。(清島理紗)
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