九州物価高アンケート 賃金との好循環 程遠く 年金生活者はさらに深刻 特に値上がりを感じるモノは?<九州4紙合同企画「物価高vs九州」>
九州における物価高の影響を探ろうと、熊日、西日本、宮崎日日、南日本の4紙は合同アンケートを実施した。回答者のほとんどが物価高の影響を「感じる」と答えた。自由記述では「物価高に見合うだけ収入が上がらないのが問題だ」との声が目立った。市民感覚からは、政府が目指す「賃金と物価の好循環」がまだ程遠いことを浮き彫りにした。
アンケートは6月中旬に実施。1748人が答え、うち熊本県内在住者は802人だった。無作為抽出の世論調査とは手法が異なる。
日々の暮らしの中で物価高の影響を「非常に感じる」は78・7%。「ある程度感じる」の19・6%と合わせると98・3%に上った。世帯収入が「600万円以上1千万円未満」と比較的高収入の層でも傾向は変わらず、多くの家庭で物価高が家計を直撃している様子がうかがえた。
特に値上がりを感じるモノやサービス(複数回答)は、生鮮食品65・7%、ガソリン43・1%、加工食品33・3%と続き、暮らしに身近な項目で物価上昇感が強かった。これに対し、支出を削っている費目(複数回答)は外食48・7%、食料品40・0%、衣料品32・6%の順だった。
自由記述では「物価が上がるのはしょうがないが、収入も上がらないとおかしい」(熊本市、45歳女性、会社員)など、収入アップが追いついていないことを問題視する声が多かった。大企業と中小・零細企業の労働者との間に差ができ二極化が進んでいる、との指摘も多く寄せられた。
年金生活者にとって物価の上昇は一層深刻で「わずかな蓄えの価値が下がる。年金額は簡単には増えないので不安」(菊陽町、74歳主婦)など、切実な訴えがあった。
厚生労働省によると、給与でどの程度のモノやサービスが買えるかを表す実質賃金は、今年5月まで26カ月連続で前年比マイナス。リーマン・ショックによる景気低迷期も越えて過去最長を更新し続けている。岸田文雄首相は1月の施政方針演説で今年中に「物価高を上回る所得を実現する」と公約している。(太路秀紀)
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストの話 終わらない物価上昇に市民の不満は蓄積している。九州など地方では購入先の選択肢が少なく〝逃げられない物価上昇〟の状態。生活への負担感はさらに大きくなっている。
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