熊本豪雨ニモマケズ…手作り「瓦版」節目の100号 球磨村の71歳、元新聞販売店員 「古里に笑顔と元気を」移転の元住民にも届け続ける
![「球磨村おがわ瓦版」を発行している宮原修さん(中央)。ヒマワリの種まきに渡小跡を訪れた地元児童を、100号の記事向けに取材していた=5月24日、球磨村](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240524TAN000180000_05.jpg?itok=wPni8crC)
球磨村の身近な話題を盛り込んだ住民手作りの「球磨村おがわ瓦版」が100号を迎えた。取材、執筆、編集を一人で担う同村渡の宮原修さん(71)が、熊本豪雨からの復旧、復興の願いと、「古里に笑顔と元気を届けたい」との思いを込めて毎月発行してきた。
![「球磨村おがわ瓦版」100号の表面](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240605TAN000027000_02.jpg?itok=v-r5omHx)
瓦版はA4サイズの両面に記事と写真を掲載。毎月10日に役場や学校などのほか、仮設団地の住人を含む村民、被災後に人吉市へ転居した元村民らに約90部を無料で配布している。
新聞販売店を退職後、「外に出る機会の少ない高齢者向けに発行物をつくろう」と制作を開始。2016年11月に地元の小川地区中心の話題を載せた初号を発行した。号を重ねると「うちの地区の話題も載せてほしか」との声が寄せられ、村内全域に取材範囲を広げた。「楽しみに待っとったよ」と、毎号スクラップしている読者もいる。
20年7月の熊本豪雨で甚大な被害を受けた村。自身も避難所などの仮住まいを余儀なくされ、初めて休刊した。廃刊も考えたが「一変した村の姿を記録しなければ」と、1カ月後には54号を発行した。
「長年持ち家に住んでいて、今さら賃貸住宅の暮らしで終わるのか…」「狭い仮設住宅の中は気がめいるけん、毎日畑に行きよる」。被災者の声には心が痛む。一部不通が続く肥薩線や、災害で拍車のかかる過疎化など、村の将来も気にかかる。それでも、被災した神社の再建や、土砂崩れから回復した球磨川支流でのヤマメ放流、赤ちゃんの誕生といった明るい話題が、宮原さんの背中を押す。
![「球磨村おがわ瓦版」100号の裏面](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240606TAN000013000_02.jpg?itok=g6Fx3env)
5月下旬、豪雨で被害を受け解体された渡小跡に、ノートと愛用のカメラを手にした宮原さんの姿があった。地元児童が、ヒマワリの種を植える様子を100号に掲載するためだ。「大きな花になあれ」と声をかけながら種をまく子どもたちに、カメラを構える宮原さんの表情がほころんだ。
100号では梅雨入りを前に、「災害への備え」を意識した記事を掲載。能登半島地震で炊き出し支援したボランティアの講演のほか、村内全域の避難訓練の様子を「訓練が訓練で終わらないよう、災害時に生かされることが大きな目的」といった話とともに掲載している。
「体力的につらいときもあるが、気丈な住民の姿を見たら弱音を吐いてはいられない」と宮原さん。豪雨から4年を迎える7月の101号では、地域の追悼行事に加え、店や施設の再開など、災害から一歩ずつ歩みを進める村の今を伝えるつもりだ。(小野宏明)
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