「最後まで匿名は容認できず」 熊本市の「ゆりかご」専門部会、20~22年度検証 緊急避難機能は評価
熊本市西区の慈恵病院が設置する「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」の在り方を議論する同市の専門部会(部会長・安部計彦元西南学院大教授)は5日、第6期(2020~22年度)の検証報告書をまとめ、大西一史市長に提出した。報告書では、親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる点を「母子にとって緊急避難として機能」とする一方、「子どもの人権、養育環境を整える面から、最後まで匿名を貫くことは容認できない」と実名を明かせる環境整備をあらためて求めた。
部会は児童福祉の専門家や弁護士、医師ら5人で構成。検証期間中の運用状況とともに、07年の開設から22年度までに預けられた170人の養育状況や運営の課題を検証した。
報告書では、匿名性の評価について「援助に結び付ける入り口となり得る」としながらも「実親のケアや支援につながらない」と指摘。「子どものアイデンティティーや自尊感情の形成には胎生期・幼少期からのストーリーを伝えていくことが重要」とし、子どもの求めに応じ知る権利が担保できる取り組みを求めた。
22年度までに預けられた170人のうち、児童相談所の事後調査などで約8割に当たる135人は身元が判明。身元判明の有無にかかわらず、預け入れ後の養育環境は特別養子縁組が最多で、身元が判明した子どもの63人(46・7%)、不明の子ども24人(68・6%)で縁組が成立した。身元判明、不明のいずれの事例でも、特別養子縁組の割合は年々増加している。
第5期に続き、医療関係者が立ち会わず自宅などで出産する孤立出産の割合は15人中10人と6割以上で、安全性についても懸念を示した。(丸山伸太郎)
◆果たしてきた役割は非常に大きい 大西一史熊本市長の話 命を守ることが大前提で、ゆりかごが果たしてきた役割は非常に大きい。一方で預かった命は自宅出産が多く、危険性が非常に高い。困難な事情を抱える人がすぐに相談できる体制が重要。出自を知る権利については、設置当初に預け入れられた子どもは多感な時期にある。出自が分からないとアイデンティティーの確立に影響がある。真実告知のあり方も含め(市と病院が設置する)出自に関する検討会の結論を待ちたい。
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