ドイツ人捕虜の生活鮮明に 久留米大教授らが収集写真を書籍化 旧ジェーンズ邸で喫茶楽しむ様子も
第1次世界大戦中に熊本市や福岡県久留米市にあったドイツ人捕虜(俘虜[ふりょ])収容所の写真を収録した「熊本・久留米俘虜収容所[1914-1920]の風景」が刊行された。熊本の収容所関連は71枚掲載され、捕虜の生活や市民の様子などが鮮明に浮かび上がる。
第1次世界大戦中の1914年、旧日本軍はドイツの拠点だった青島[チンタオ](中国東部)を陥落させ、約5千人のドイツ軍人らを熊本など日本各地の収容所へ移送。熊本では、同年11月から翌年6月までの約7カ月間、最大で786人を収容した。将校は収容所本部だった物産館集議所(旧ジェーンズ邸)=熊本市中央区南千反畑町、従卒(従兵)は隣接の米穀検査所、下士官らは同市内の寺院9カ所にそれぞれ収容された。
写真は、捕虜が撮影し、収容されていたドイツ軍予備将校エドゥアルト・ヴィルの旧蔵。久留米大(久留米市)が郷土資料収集を目的に購入し、調査の結果、475枚のうち139枚が熊本関連だと判明した。
2022年に久留米大などが写真を紹介する企画展を実施。より多くの人に知ってもらうため、大庭卓也・久留米大文学部教授と小澤太郎・久留米市文化財保護課主査が編者となって書籍化した。
熊本関連では、捕虜たちが旧ジェーンズ邸の庭で喫茶を楽しんだり、遠足で訪れた水前寺成趣園を散策したり、収容所員の家族と交流する様子などが写されている。熊本博物館(熊本市中央区)によると、熊本の収容所の写真がまとまって見つかったのは初めてで、当時の旧ジェーンズ邸の写真も初確認。「熊本の収容所の実像に迫ることができる非常に貴重な資料。当時の街並みや人々の暮らしぶりもうかがえる」としている。
大庭教授は「写真からは当時の日本が国際条約を順守し、捕虜を人道的に扱っていたことが分かる。今後、この写真を基に熊本の収容所の実態解明へ向けた研究が進むことを期待したい」と話している。
花書院、2200円。(前田晃志)
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