「君臣並耕」こそ政治の基本 真の賢者は人民とともに耕作し、雑用をいとわず <細川護熙さんエッセー>

熊本日日新聞 2024年1月27日 05:00
東京都品川区のアトリエでくつろぐ細川護熙さん(小野宏明)
東京都品川区のアトリエでくつろぐ細川護熙さん(小野宏明)

 私は湯河原の自宅と、軽井沢の山荘の近くに、わずかばかりの畑を持っていますが、土いじりほど人の心を豊かにしてくれるものはないとつくづく思います。自然の中に身を置くことで、学ぶべき事ばかりです。

 私は高校時代から、陶淵明はじめ、王維、孟浩然、韋応物、柳宗元といった中国の自然派の詩人たちの詩に強く魅かれてきました。

 六十歳になったら退隠・閑居暮らし、晴耕雨読の暮らしに入ろうと、そうずっと希[ねが]っていたのは、陶淵明の「園田の居に帰る」など、右に挙げた詩人たちの影響が大きかったからだと思います。

 ヘルマン・ヘッセの『庭仕事の愉[たの]しみ』の中に「地面に膝をついて草むしりをするのは、礼拝のためにひたすら礼拝を行っているようなものです。そしてそれが永遠にくりかえされるのです。なぜなら三つか四つの畑をきれいにすると、最初の畑にはもう緑の草がはえているからです」(岡田朝雄訳)とありますが、まさしく六月から八月にかけて繁殖の時期の雑草は、眺めていて伸びるのがわかるのではないかと思うほどの勢いで、草引きは全く骨が折れます。

 祖母は八十六歳で亡くなるまで、モンペ姿で草むしりや野菜の手入れに精を出していましたし、私もよく畑仕事を手伝わされていました。

残り 1990字(全文 2523字)

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本のニュース