田中角栄元首相に辞職を勧める 自民公認めぐる綱引き、「園田裁定」で知事に 日本一づくり運動にアスペクタ、黒川温泉にも注目 <細川護熙さんのあのころ>
(聞き手・宮下和也)
-参院議員として所属していた田中派の内紛に嫌気がさしていたというところまで伺いました。田中角栄さんには知事選出馬を相談なさいましたか。
してません。それは熊本の中の話ですから、とにかく熊本の中で決着がつかないとどうにもならないので。いざ選挙戦になったら、そりゃあ角さんのところに行ったかもしれないけど。そういえば田中さんの話で私、言いましたっけ。辞めた方がいいって言いに行ったってこと。
-えっ聞いてません。お願いします。
あのね、ロッキード事件で追い込まれたでしょ。マスメディアでも田中氏は議員辞職すべきだという、ものすごい逆風だったわけですよ。政界の中でも田中派以外は、そういう声がとても強かったですね。で、いよいよ追い込まれた12月の、いつだったかな。
田中派には中央突破論しかない 私はそうじゃないと思います
-1974年11月に田中内閣が退陣し、76年2月にロッキード事件が発覚します。田中さんはこの年7月27日に外国為替管理法違反と受託収賄の疑いで逮捕されました。8月に保釈され、12月の衆院総選挙には刑事被告人として出馬。世論の逆風の中でトップ当選を果たしました。辞職を勧めたというのはこの時のことですね。
そうです。もう酒浸りになっておられた時ですよ。私は田中邸に、夜9時頃だったかなあ、プレスの人の目をくぐって、中で待ってたらしばらくして戻ってこられた。「お、何だ」ということでね。
「いや今日はちょっと改めてお話ししたいことがあって参上しました」「ここはいっぺん退かれて、出直された方がいいんじゃないかと思います」ということを言いました。
その時に、アメリカ大統領選でケネディに敗れた後、再挑戦して当選を果たしたニクソン大統領や、フランスのドゴール大統領が一時はパリから遠く離れた地に隠せいして、また再登場して第5共和制の初代大統領に就任した例を挙げて「若輩の私が言うのは大変せんえつな話ですが、田中派の中には中央突破論しかない。私はそうじゃないと思います」…とそんなことを言ったら、機嫌良くなかったですね。だけど「おまえの言う意味はわかった」という趣旨のことを言われました。
私みたいにそんなことを言う人間はほんとにいませんでした。後で聞いたところによると、田中氏の周辺は、私が中曽根(康弘)氏から差し金されたんじゃないか、それで言いに来たんじゃないかと思ったらしい。
-心から忠告する人はだんだんいなくなるものですか。
腰巾着みたいな人たちは、甘いことしか言いませんよ。ここは中央突破でいくべきだとか、田中軍団一丸となって、歯向かうようなやつは切り捨てていこうっていう、そのくらいの勢いでしたからね。そんな中でいったん退くべきだなんてことをいうやつは、ちょっと頭がおかしいんじゃないかと思ったんじゃないですかね。秘書連中をはじめとしてみんな。
清正公さんも12年… 知事も「やっぱり長すぎるのは良くない」
-話を戻して、細川さんが1年後に予想される次の熊本県知事選に名乗りを上げたのは82年2月です。当時は「清正公(せいしょこ)さんも12年」といわれ、熊本の知事は3期12年まで、とする不文律がありました。しかしそれを最初に言い出した寺本広作さんも、寺本さんに代わった沢田一精さんも4期目を目指しました。
いやあ、これは押したり引いたり、まあ大変でした。権力というのはみんな、好きな人が多いってことでしょうね。清正公さんというより、3期12年でも長い、やっぱり長すぎるのは良くないって、そういう気持ちですよね。
残り 2790字(全文 4296字)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
「飲酒運転、起こさせない熊本を」 職員が事故死した熊本市が動画公開 忘年会など年末へ呼びかけ強化
熊本日日新聞 -
【水俣病関西訴訟 最高裁判決20年】行政の不作為立証した弁護団 「国と県は責任を果たして」 被害者救済、残る課題
熊本日日新聞 -
半導体教育で修学旅行を誘致 大津町の観光協会が今秋から 利用した高校生らにも好評
熊本日日新聞 -
【解説】安全不十分「計画通り」困難に 熊本市電の上下分離、25年4月移行見送り
熊本日日新聞 -
熊本市電「上下分離」延期「安全確保のため」 熊本市長が説明 25年4月移行予定を先送り
熊本日日新聞 -
厳選アクセサリーや雑貨で「日常に特別感を」 ヒロ・デザイン専門学校生 鶴屋にショップ、12月2日まで
熊本日日新聞 -
肥後銀行と福岡銀行が企業のSDGs支援で協力 各行のサービスを相互利用 肥後銀は25年1月めど
熊本日日新聞 -
新米味わい農家と消費者交流 「南小国町米フェス」 5品種を食べ比べ、晩秋の名物イベント
熊本日日新聞 -
親子で料理、会話も弾む 熊本市・山ノ内校区の子育てサークルで教室
熊本日日新聞 -
平和への思い沖縄の歌に託して 小国町の地域食堂でコンサート 沖縄三線グループ
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「家計管理」。11月25日(月)に更新予定です。