五木村、国・熊本県の振興計画に合意へ 当初案の「流水型ダム」文言削除 15日に3者協議 20年で100億円支援

熊本日日新聞 | 2023年5月12日 08:00

流水型ダムの貯水時に水没が想定される五木村の旧中心部。手前に流れるのは川辺川=昨年8月、五木村

 熊本県の川辺川に建設予定の流水型ダムの貯水時に一部地区の水没が想定される五木村が、国や県がまとめた村の新たな振興計画案に合意する方針を固めたことが11日、分かった。国と県が示していた当初の案から流水型ダムに関する文言を削除。受け入れは時期尚早としてきた村側も「自分たちの意向が一定程度尊重された」と判断した。15日に村で開かれる国、県、村の3者協議で正式決定する見通し。

 県は昨年10月、流水型ダム建設を前提に、振興計画案を村側に提示。今年1月には財源として、2023年度から約20年間で総額100億円規模の財政支援をする考えも伝えた。

 複数の関係者によると、今回の計画案は村との協議を踏まえ、これまでの案に盛り込んでいた五つの柱のうち「流水型ダムを踏まえた新たな振興への対応」という項目を削除。ダム関連工事に伴う経済効果を最大化する対策についても外した。

 また「清流川辺川と流水型ダムを生かした新たな振興」としていた項目も「豊かな自然やこれまで整備した施設等を生かした新たな振興」との表現に変えた。

 修正案は、流水型ダムに関する文言以外は当初案を踏襲。人口減少を食い止めるため、移住・定住の促進に向けた新たな平場や住まいの確保、子育て環境の充実などを盛り込んでいる。計画のスタートは23年度。27年度までを第1期と位置付け、その後は5年ごとをめどに計画を見直す方針。

 県からの計画案提示後、村議会は木下丈二村長も出席する全員協議会や、川辺川ダム対策調査特別委員会を非公開で複数回開いて対応を協議。県が修正案を示したことで容認する意見が多数を占めるようになったという。

 ただ、一部議員には「計画案には人口減少の対応策に具体性がない」「決定前に村民大会で住民の意見を聞くべきだ」といった反対意見も根強く、決定に向けては流動的な部分も残る。

 3者協議を前に、木下村長は「村の振興は待ったなしの状況。ダム建設とは切り離して、一日でも早くやれるところから振興策を進めたい」と話している。(川野千尋、内田裕之)

 ◆川辺川の流水型ダム 球磨川水系の氾濫対策として国土交通省が建設を目指し、県も容認している。2027年度に本体工事に着手し、35年度の完成を見込む。建設する場所は旧川辺川ダム計画と同じ相良村四浦の峡谷。高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トンで、国内最大の治水専用ダムとなる。平常時は水をそのまま流し、洪水時はためて放流量を調節する。

川辺川ダム

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