立野ダム、5月中に完成 「洪水調節できる状態」 11月から試験湛水へ

熊本日日新聞 | 2023年5月10日 08:00

完成が迫った立野ダム。本体のコンクリート打設が完了した=9日、南阿蘇村(小林義人)

 国土交通省立野ダム工事事務所は9日、熊本県の白川上流で建設中の国営立野ダム(南阿蘇村、大津町)の本体が今月中に完成すると明らかにした。本体のコンクリート打設が4月に完了し、ダム頂部を歩行するための橋桁の設置など一部工事を残すのみという。

 熊本市中央区のホテルで「立野ダム試験湛水[たんすい]検討委員会」第2回会合があり、長岡一成所長は現状で「洪水調節ができる状態」と報告した。試験湛水を11月1日に始める方針も示した。

 立野ダムは堤の高さ87メートル、長さ197メートル、総貯水量は約1千万トン。本体工事は2018年8月に始まり、20年10月からコンクリート打設に着手した。

 同事務所によると、当初は昨年12月に完成予定だったが、雨天が多かったことなどから約5カ月ずれ込んだ。仮排水路トンネルに迂回[うかい]させていた白川の水は今年2月から元に戻し、ダム下部の穴を通している。

 会合では国交省の担当者が、ダムに最高水位まで水をためる試験湛水について説明。湛水で一部冠水する国の天然記念物「阿蘇北向谷原始林」の植生環境を守るため、湛水期間が25日を超えると想定される場合は中断する計画も示した。

 学識者の委員からは「ダム周辺で斜面崩壊が起きた場合、小規模でもメカニズムを確認しておくことが必要」などの意見が出た。

 立野ダムは、熊本市街地など下流の洪水防止を目的にした治水専用の流水型ダム。ダム下部に約5メートル四方の穴を3カ所あけ、平常時は穴から川を流下させ、大雨時は穴を流れきれない水がたまる仕組み。総事業費は約1270億円。(丁将広)

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