最低賃金低い九州 「目安額」制度に課題 特定最賃拡大で活路を 熊本大・中内哲教授(労働法)の話 九州3紙合同アンケ

熊本日日新聞 | 2022年6月15日 06:30

熊本大の中内哲教授

 熊日など九州3紙の賃金アンケートで、約9割の回答者が現在の最低賃金(最賃)を低いと感じ、6割超が時給「950円以上」を望んでいた。政府が「できるだけ早期に全国平均千円以上」の目標を掲げただけに、最賃の改善が今夏の参院選で争点の一つになる可能性がある。

 全国47都道府県をA(高)~D(低)の4区分とし、厚生労働省の審議会が各ランクの引き上げの「目安額」を示す現制度は、1978年度からスタート。九州では福岡がC、ほかの6県がDランクとする評価は一貫して変わっていない。

 この区分けは、給与や消費支出など19項目のデータに基づき総合指標を設定。東京都を100とし、A81・0以上、B76・5以上、C72・6以上と設定された2017年の見直しで、埼玉県A、山梨県Bなどへランクアップした。ちなみに福岡県75・1(ワースト24位)、熊本県69・0(同10位)、鹿児島県67・7(同6位)との評価だった。

 そもそもなぜ、九州などは最賃が低額なのか。それは、ランクを決める際に用いる給与などの水準が低いのはあるが、低いデータを指標とすれば、ランクが固定されて最賃が改善されづらいという制度上の課題がある。賃金が上昇しない日本で、本来は全体的底上げがあるべきなのに、目安制度の運用が各ランク内の横並びを招き、賃金上昇の足かせとなってきたのは否定できない。

 最賃引き上げを考える際、特定最賃制度も見逃せない。労働組合と使用者との申し出に基づき、特定業種の従事者へ適用される最賃を定める仕組みで、一般的な地域別の最賃よりも高く設定される。例えば、福岡県の製鉄業など980円、熊本県の自動車製造業など902円、鹿児島県の自動車小売業872円などだ。

 21年3月時点で、特定最賃の適用者は約292万人。特定最賃が多くの分野に浸透すると、各地の賃金の引き上げにつながる。労組の推定組織率は同年16・9%と低いが、特定最賃を広げる取り組みは多くの賛同者を得るきっかけになるはずだ。

 なかうち・さとし 1969年、広島県生まれ。神戸大院法学研究科博士前期課程修了、同後期課程単位修得退学。北九州市立大や熊本大の助教授などを経て、2010年9月から現職。現在、熊本県労働委員会の会長も務める。

 ■最低賃金 正社員だけでなく契約や派遣、パートやアルバイトのほか外国人技能実習生なども含め、雇用されて働く全ての労働者に適用される賃金の最低額。毎年、中央で厚生労働省の審議会が示す目安を基に、各都道府県ごとの審議会で労使代表と公益委員による議論を経て改定される。最賃を下回る額の労働契約は認められず、違反した使用者には罰則もある。

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