「この生活が続くんでしょうね」 労働者に広がる閉塞感 30年前と変わらない手取りも
熊本日日新聞 | 2022年6月15日 06:30

熊日など3紙が実施した賃金に関する合同アンケート。1500人超の回答から浮かんだのは、現在の給与や時給を安いと感じながらも多くの人が給与が上がるとは思えないという、労働者に広がる閉塞[へいそく]感だ。(立石真一、岡本遼)
熊本市の男性(34)は5年以上、深夜の清掃と早朝の配送のアルバイトを掛け持ちしている。1日計4時間働いて、月収は合計10万円ほど。この5年で時給はわずかに増えたが、残業が削られたため手取りは減った。
熊本市内の私立大を卒業後、営業職の正社員として身を削るような日々を送った時期もあった。しかし、職場の人間関係に悩んで退職。その後はアルバイトを転々とした。
実家で暮らすが家計は別々だ。自身の食費は月2万円に抑えるよう心がけている。唯一のぜいたくは休日前に飲む酒と、たばこ。最近、物価が上がったと感じることが増えたという。
学生の頃、30代といえば「普通に仕事をして、結婚していると思っていた」。しかし現実は違った。正社員との格差は思っていた以上に大きく、収入が少ないため結婚も考えられない。社会になじんでいないと感じることもあるが、なるべく余計な事は考えないようにしている。男性は「お金が足りなくなったら、もう一つバイトを始めようかな。まだ体力はあるし…。これからも、こんな生活が続いていくんでしょうね」とつぶやいた。

現在は非正規で働く熊本市の女性保育士(51)は短大を卒業した1991年、熊本市内の保育園に正職員として就職した。当時は保育士のほとんどが正規雇用で、手取りは13万円ほどだった。
結婚を機に9年間、保育の現場を離れたことが転機となった。離婚した2005年、保育の現場に戻ろうとした女性を待っていたのは、保育士の募集の主流が契約やパート、アルバイトなど非正規に移行した業界だった。
女性は仕方なく、数カ所の保育園を渡り歩きながら月十数万円の手取りを得て、女手一つで子ども3人を育て上げた。
保育士として20年以上のキャリアがある女性だが、契約職員として働く現在の手取りは約14万円と新卒時代とほぼ変わらない。仲間の若い非正規保育士の間には「頑張って正職員になっても責任が増えるだけで給料はたいして高くないから今のままでいいや」という雰囲気があるという。女性は「保育士の賃金が上がり、若い人が少しでも希望を持てる業界になってほしい」と願った。
熊本の経済
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