裁判勝訴も「謝罪もなく」悲しみ いじめ苦に自殺の女子高生の母 熊本

熊本日日新聞 | 2021年12月05日 07:23

15歳で亡くなった女子生徒の肖像画に触れて、生前をしのぶ母親。肖像画は、画家が女子生徒が成人した時を想像して描いた

 いじめを苦に自ら命を絶った熊本県立高1年の女子生徒=当時(15)=の母親が、学校や加害生徒に損害賠償を求めた訴訟で勝訴してから1年4カ月がたった。一審、二審と4年に及んだ裁判で、学校設置者の県と加害生徒の損害賠償責任が認められたが、「誰からの謝罪もなく、娘は浮かばれないままだ」と今も悲しみの中にいる。5日開く裁判の報告会で、今苦しんでいる人や裁判を支えてくれた人に、この気持ちを伝える。

 女子生徒は熊本市内の県立高1年だった2013年8月に自殺した。女子生徒と加害生徒は寮に入っており、主にいじめは寮生活の中であったとされる。

 母親ら遺族は16年7月、「真実を知りたい」と加害生徒と県を提訴。いじめに関連する裁判で、県が初めて被告となった。19年5月の熊本地裁判決は、加害生徒が無料通信アプリで脅迫めいたメッセージを送信したことや、中学校の卒業アルバムに落書きしたことなどを不法行為と認定し、賠償を命じた。しかし、学校の責任は否定した。

 20年7月の福岡高裁での控訴審判決は、寮の舎監長の教諭(当時)が女子生徒と加害生徒のトラブルを校長に報告せずに「けんか」と独断し、和解を強制した対応を安全配慮義務違反に当たると認定。県に慰謝料の支払いを命じた。県は上告せず、判決が確定した。

 女子生徒は3人きょうだいの一番上。自殺の翌年には夫も他界した。裁判は母親にとって、1人で次女と長男を育てながらの闘いとなった。控訴審での意見陳述書には、女子生徒のやさしい人柄を書き込んだ。文章を考えながら「涙が止まらなかった」という。

 裁判を振り返り、学校が加害生徒と一緒になって「けんか」と主張し、いじめを認めようとしなかったことを思い出すと、心が痛む。「娘の尊厳を傷つけられ、常に敵視されている」と感じていた。「いじめはたくさんの人を傷つけることを想像してほしい。教職員は不都合な事実を隠さないでほしい」

 裁判での支えは、県内外のいじめ被害者や保護者たちだった。判決後、母親は新型コロナウイルスの影響で報告会を開けずにいた。「5日の報告会が、支えてくれた人や同じ苦しみの中にいる人の参考になれば」と願う。

 母親によると、当時の教職員と加害生徒は、誰も謝罪に来ていない。県教委には2度、関係する教職員への面会を求めたが、拒まれた。(隅川俊彦)

 ◇熊本県立高1年女子生徒の自殺
 熊本市の県立高の女子生徒が2013年8月、帰省中の自宅で自殺。県の第三者機関「県いじめ調査委」は17年、元同級生のいじめを認めたが「自死の原因は特定できなかった」と結論づけた。19年の熊本地裁判決は元同級生のいじめの一部を不法行為と認め、11万円の賠償を命じたが、学校側の責任を否定。県だけを相手取った20年の福岡高裁判決は、学校側の対応が女子生徒に精神的苦痛を与え、安全配慮義務違反があったとし、県に220万円の賠償を命じた。

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