少年野球の移籍なぜ制限? 公式戦出られず 軟野連ルールに賛否

熊本日日新聞 | 2021年10月13日 07:00

9月に熊本市で行われた小学生軟式野球の公式戦

 「息子がチームを移籍したら、年内の公式戦に出られなくなった」。少年軟式野球の選手登録を巡り、熊本市の40代男性から「ペナルティーのようなルールが必要なのか」との声が熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に寄せられた。少年スポーツの移籍ルールはどうなっているのか。現状を調べた。

 男性の長男は小学4年だった今年2月、「より強いチームでプレーしたい」と所属チームの了承を得て強豪チームに移った。

 しかし、入団後に思いもよらぬ事態に。今年末までは公式戦出場が認められないという。父親は「練習試合や交流大会では出場機会をもらえているが、公式戦ではベンチに入れない。必死に練習している息子がかわいそうで…」と嘆く。

 熊本県軟式野球連盟(県軟野連)によると、今回のような移籍に関するルールは全日本連盟(全軟野連)の規定に基づく。1~12月は同一チームに所属するルールで、その間は移籍しても選手登録できないため、年内は公式戦に出られない。

 遠方へ転居した場合など例外はあるが、全軟野連は「選手の頻繁な移籍や、チームによる引き抜きを抑制するために一定の規制は必要」と理解を求める。ただ、福岡県や大阪府などでは移籍元の承諾を得ることなどを条件に、年度途中の移籍でも公式戦出場を認めているという。

 他の競技団体はどうなのか。日本サッカー協会は2017年3月、移籍を理由にした試合出場制限を認めない方針を確認。選手育成の観点から「プレー機会が失われることを見過ごせない」(広報担当者)と判断したためだ。

 日本バスケットボール協会は19年3月に小学生世代の移籍に関する運用細則を定め、人間関係のトラブルなど「状況に応じて移籍が可能」と周知。熊本県協会は大会期間中のトラブルを回避するため、移籍後2カ月間は公式戦に出場できない規定(4年生以上)を設けて対応している。

 スポーツ分野の移籍制限ルールを巡り、公正取引委員会は19年6月にガイドラインを提示。独占禁止法に基づき公正で自由な競争を守る観点などから、各団体に不適切なルールの自主的な見直しを求めた。

 熊本県内では15年度以降、小学校部活動を廃止し、民間クラブなどの社会体育に移行する動きが本格化。少年野球も学校の枠を超えたチームでプレーするケースが増えた半面、チームのレベルや指導方針とのミスマッチが生じがちだ。

 県内の野球関係者からは「厳しすぎるルールは今の時代には合わない」との声も。一方で、移籍が無制限に認められれば勝利至上主義が強まるとの懸念も根強い。県軟野連は「今は部活動が主流だった時代のルール見直しを進めている過渡期。移籍への対応も改めるべきは改めたい」としている。(原大祐)

 ◇スポーツ法務に詳しい冨田英司弁護士(大阪市)の話 
 少年スポーツの移籍制限ルールも独占禁止法適用の可能性がある。また、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むという「スポーツ権」は国際法上で人権として確立し、スポーツ基本法でも規定されている。制限ルールに、子どもの権利を侵害するほどの合理的理由があるかどうか。そうした視点での議論も必要だ。

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