「地元盛り上げたい」 熊本地震被災の2旅館、新経営者で再出発 南阿蘇村・栃木地区

熊本日日新聞 | 2021年10月11日 06:30

地元住民の願いをくみ取り、小山旅館を再開させた田原佳代子さん=1日、南阿蘇村

 2016年の熊本地震で被災し、5年以上休業していた南阿蘇村栃木[とちのき]地区の老舗温泉旅館2軒が、それぞれ新たな経営者の下で再出発を果たした。村西部の玄関口に位置する2軒の経営者らは「笑顔で観光客を迎え入れ、地元を盛り上げたい」と口をそろえる。

 再開したのは小山旅館と、荒牧旅館から名前を変えた「アコンカグア リゾーツ」。二つの旅館は、白川渓谷を一望する湯治場として人気を集めた同地区を、長年けん引してきた。しかし、本震で渓谷底部の泉源が崩壊。建物の外壁に亀裂が入るなど大きな被害を受けた。

 8月6日、まずは小山旅館が営業を再開した。200年以上の歴史を持ち、孫文や西郷隆盛らが滞在した老舗だが、高齢の元オーナーは資金難もあり再開を断念。地元の「旅館を残したい」との願いをくみ、熊本市で不動産会社を経営する田原佳代子さん(43)が経営権を取得。グループ補助金を活用して復旧した。

 渓谷の上に建つ旅館の各階からは、落差40メートルの「鮎返りの滝」が一望できる。地震で崩壊した約80メートル下の泉源も復旧し、ポンプでくみ上げた無色透明の温泉が浴槽を満たす。昔ながらの和室に布団敷きというスタイルを守る。

 再開後、常連客らから「新婚旅行で訪れた思い出の場所。また泊まりに行きます」といった声が寄せられたという。田原さんは「なくてはならない存在だと再認識し、責任を感じる」と気を引き締める。

荒牧旅館をリニューアルして「アコンカグア リゾーツ」を立ち上げた、高校の同級生の松原正恭さん(左)と永田祐介さん=6日、南阿蘇村

 10月1日には、約140年の歴史を持つ荒牧旅館をリニューアルしたリゾートホテル「アコンカグア リゾーツ」が誕生した。

 新たに経営を担うのは、高校の同級生の2人。阿蘇市で温泉宿「蘇山郷」を経営する永田祐介さん(48)と、熊本市でコンサルティング会社を運営する松原正恭さん(49)だ。元オーナーの事業断念を聞いた永田さんが再建を提案し、松原さんがホテル運営会社「K.M.A SPA&RESORTS」を設立。新型コロナウイルス禍による工事延期といった困難を乗り越え、開業にこぎ着けた。

 目玉はエントランスのすぐ横に新設した温水プールで、館内は黒を基調としたモダンな雰囲気。客室数は旅館時代の21から12に減らした。施設内の多くで非接触型システムを導入。ルームキーを廃し、利用客は予約後にメールで届くパスワードを使って客室に出入りする。支払いはカード決済でキャッシュレス化した。

 施設は小山旅館より高台にあり、かつての泉源から湯をくみ上げるには多額の費用がかかるため、利用を断念。しかし、幸運にもプール用の井戸を採掘中、地下200メートルから新たな温泉が湧き出した。湯は鉄分が多く少し赤みを帯びているが、泉質は変わらないという。“泊食分離”を積極的に進め、村内の飲食店への送迎も担う。

 往時のにぎわいを取り戻そうと、二人三脚で歩み始めた松原さんと永田さん。「アフターコロナを見据え、外国人富裕層にアピールしたい。村の周遊観光の拠点を目指す」と意気込む。(上杉勇太)

記事アクセスランキング

フォローする

  • facebook
  • twitter
  • LINE
  • youtube