TSMC熊本工場 採取の地下水「75%を再利用へ」 水処理を細分化「水1滴を4回使用めざす」
菊陽町に進出した半導体受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場では、年内の量産開始を前に、高度な水処理システムが既に稼働している。運営子会社のJASMは半導体製造に使った水を再び使えるようにしたり、工場内の空調機器の冷却などに使ったりして、採取した地下水の75%のリサイクルを目指している。
半導体の製造には大量の水を必要とする。シリコンウエハーに付着した化学物質やちりを洗浄するためだ。第1工場では、フル稼働時に1日最大3万立方メートル(トン)の水を使う予定。このうち最大8500立方メートルは敷地内の井戸からくみ上げた地下水を使う。残りは工場内でリサイクルした水で賄う。
水処理システムは、地下2階地上4階建ての工場棟の地下2階にある。センサー約300台が24時間監視する中、フッ素などの化学物質が混ざった水を20種類に分類し、それぞれの用途で再利用している。硫酸などの化学物質は16種類に分けて、リサイクルできないものは外部の専門業者に処理を委託し、他の用途向けに利用してもらう。
TSMCによると、シリコンウエハーに回路を焼き付けるために使う化学薬品の「フォトレジスト」を低濃度で回収する独自技術を半導体業界で初めて導入。熊本の第1工場でも同じシステムを採り入れた。
JASMで水処理を担当する部署の黄冠諭マネジャーは「水処理を細分化し、再利用しやすくしている。台湾のTSMC工場では水1滴を平均3・5回使っているが、熊本では4回を目指している」と話す。
一方、第1工場から排出する水の量は、フル稼働時には1日当たり5千立方メートルになる。下水処理場の熊本北部浄化センター(熊本市北区)に排出する前に、8種類のオンラインセンサーで水質を確認。法の規制値よりも厳しい自社基準を設けており、これを超えると、水が工場内の処理システムに自動的に戻る仕組みという。国の基準に従って週1回、外部の第三者機関から、排水の水質検査を受けている。
健康への悪影響が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)に関しては、輸入や国内での製造が規制されているPFOSやPFOA、PFHxSが含まれる化学物質を使っていない。これらを除いた3種類のPFASがフォトレジストなどに含まれるが、貯蔵や運搬、使用、廃棄などの各過程で流出しないよう厳密に取り扱い、最終的には主に事業廃棄物として外部業者に引き取ってもらう。
地下水の水位も監視している。異常を確認したらポンプが自動停止し、過剰なくみ上げを避ける態勢を整えた。
黄マネジャーは「台湾の工場の水処理技術ノウハウを生かし、熊本の地下水を大事に使っていきたい」と強調した。(山本文子、立石真一)
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