衆院選投票率、低迷から脱せるか 熊本県内、過去4回は50%台 政治不信、超短期決戦の影響は
衆院選の熊本県内の投票率(小選挙区)は近年、低迷を続けている。自民党が政権に返り咲いた2012年以降、21年まで4回の選挙はいずれも50%台にとどまっており、戦後のワースト1位から4位を占めている。陣営からは「今回、劇的に投票率が上がるとは思えない」との声が漏れる。政治不信の高まりや、新政権の発足から駆け足の選挙日程が理由のようだ。
戦後の最高記録は消費税導入が争点となった1990年の81・36%。現行の小選挙区比例代表並立制となった96年以降では、民主党政権が誕生した2009年の71・76%が最も高かった。自民党が政権を奪還した12年以降、支持率の低い野党が乱立する「多弱」の状況が続いた。自分の1票が選挙結果を変えるかもしれない、との緊張感が薄れた側面もあり、投票率は低迷した。
新型コロナウイルス禍で迎えた前回21年は56・40%で、戦後ワースト2位となった。保守分裂の激戦が繰り広げられた熊本2区が、県内4選挙区で最も高い58・67%だった。
しかし、2区在住の漁業者の男性(80)は「今回は、保守分裂の争いでなくなり、選挙があまり話題に上らない」と感じている。ある陣営の幹部も「自民党派閥の裏金事件による政治不信から、今回は投票に行かないという支持者の声も耳にする」と明かす。
石破茂首相が選んだ〝超短期決戦〟の影響も考えられる。首相就任の8日後の解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短だ。投票所の入場券が届くのが遅れ、選挙戦序盤に期日前投票に行くのをためらった有権者もいるという。
熊本県内の期日前投票は、公示翌日からの5日間で8万9302人。前回の同期間と比べて1万584人(10・6%)減っている。
一方、半導体関連企業が集積し、人口が増加している熊本3区では、生活と密接に結び付く政策への関心が高まっているようだ。ある陣営の幹部は「有権者から、交通渋滞解消を求める声を多く聞くようになった」と話す。
熊本大の伊藤洋典教授(政治学)は、投票率を上げる意義について「国民が選挙に関心を持ち、政治家をしっかりと監視していると示す。そのことが政治の信頼回復につながる」と指摘する。
投票行動に影響する天候も気になるところだ。熊本地方気象台によると、投票日27日の県内の天気は曇り一時雨の予報となっている。残りわずかとなった選挙戦で、候補者たちは有権者の関心をどこまで高めることができるのだろうか。(中尾有希)
熊日では「投票に行く理由、行かない理由」をテーマにしたアンケートを実施しています。こちらから回答して下さい。受け付けは26日までです。
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