都内のアンテナショップが次々撤退する中で… 創業30周年迎えた銀座熊本館 「消費者との出会いの場」に活路求める
東京・銀座にある熊本県のアンテナショップ「銀座熊本館」が創業30周年を迎えた。賃料の高騰や電子商取引(EC)サイトの浸透を背景に、東京から撤退するアンテナショップが増える中、熊本県内の自治体や企業がじかに首都圏の買い物客に特産品や商品をアピールする「消費者との出会いの場」としての存在価値に活路を求める。
1987年、県産品のPR拠点として県が一部を所有するオフィスビルに開設。94年に1、2階をアンテナショップに改修した。全国の自治体でも4番目に早かった。菓子や酒類、調味料など県産品約1500点を販売するほか、郷土料理が味わえる飲食コーナーや観光案内スペースがある。
2023年度の売上高は前年度比9%増の2億9700万円。新型コロナウイルス禍前の水準まで回復したが、熊本地震の復興応援ムードで過去最高を記録した16年度の6億2千万円に比べると半分以下だ。一時は年間8500万円まで激増したくまモングッズの売り上げも、近年は1200万円と陰りが見える。
地域活性化センター(東京)によると、都内のアンテナショップは20年度の81店舗をピークに23年度は67店舗に減少。コロナ禍を機に閉店や、高額化する賃料を嫌っての移転が相次いでいる。今後も宮城県や青森県が閉店を予定。百貨店などでの単発フェアに切り替える動きもあるという。
熊本館の場合は県が区分所有する〝自社ビル〟に入居することから、賃料がかからない強みがある。最近は県内市町村や民間企業との連携を強化。市町村や企業が自ら企画を提案し、首長らにも積極的に店頭に立ってもらい直接、大消費地の客にPRしている。
例えば新千円札の肖像に郷土出身の細菌学者・北里柴三郎が採用された小国町は、柴三郎に特化したフェアを開催。上天草市は熊本の地元タレント・上田アニさんに来場してもらい、上田さんプロデュースのクリームシチューを宣伝してもらった。
熊本館を運営する県物産振興協会の小山知子東京支部次長は「物を買うだけならネット通販でできる。商品の魅力を直接伝える場としての価値を大切にしたい」と話す。(中尾有希)
銀座熊本館30周年創業祭
14日まで開催中。飲食コーナーで馬刺しや辛子れんこん、球磨焼酎をセットにした「記念御膳」(3千円)を提供するほか、各市町村フェアで使用したくまモンとのコラボイラストを展示する。12~14日は先着30人にエコバッグを配る。
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