ニホンモモンガ、出産に季節差 春2匹、夏は5匹「進化の謎解く鍵に」 森林総研(熊本市)の鈴木さん、研究論文発表
リス科のニホンモモンガが1回に出産する子どもの数が季節によって違うことが、森林総合研究所九州支所(熊本市中央区)の森林動物研究グループ主任研究員、鈴木圭さん(40)の調査で分かった。春は約2匹、夏は約5匹と差がある。鈴木さんは「リス科の動物について、進化の謎を解く重要な鍵になる可能性がある」と指摘する。
リス科の動物は、樹上で生活するネズミの仲間が進化した。①樹上を走りまわる②樹上で生活し、滑空する③地上で生活-の3グループに分けられる。①から②と③にそれぞれ進化したと考えられている。
ニホンモモンガは、②に分類される。体長は約10~15センチで、本州や九州、四国に生息している。ほかのリスと異なり、春と夏の年2回、出産する。
鈴木さんは学生時代、ニホンモモンガを研究した経験がある。森林総合研究所九州支所でシカの個体数管理に関する研究に取り組む傍ら、同僚の協力を得て2022年に個人で調査を始めた。リス科の動物が1回の出産で生んだ子どもの数のデータや論文、資料など計51件を世界中から収集した。①と②を4種類ずつ、③を6種類の計14種について、計2363回の出産の記録を整理した。
出産数は乳頭数と関係する。哺乳類が1回に出産する子どもの数は、乳頭数の半分程度とされ、一般的に「2分の1ルール」と呼ばれる。調査によると、①と②の乳頭数はニホンモモンガが10個で、それ以外は8個。③では、樹上でも生活するシマリスだけが8個で、ほかの5種類は10個だった。
ニホンモモンガの出産数は、春は平均2・1匹で、夏は5・3匹。乳頭の数と比べると、春は2分の1より少なく、夏はルール通りだった。
ほかのリスの出産数をみると、①と②の平均は1・6~3・3匹。「樹上で暮らすリスの出生数は乳頭数の2分の1を下回る」が定説で、ニホンモモンガの春の出産数もこれに当てはまる。③の出生数は4・2~6・5匹。ニホンモモンガの夏の出生数は③の特徴と重なる。
研究調査により、ニホンモモンガが樹上と地上で生活するリスの両方の特徴を備えていることが明らかになった。鈴木さんは「今後はニホンモモンガの出産数が季節で違う原因を明確にし、リス科の進化の過程を明らかにできるよう研究を続ける」と話す。
ニホンモモンガの研究者は国内でもわずかで、今回の調査結果は貴重な資料となりそうだ。
研究論文は6月、脊椎動物の進化などについての論文を掲載する国際的な学術雑誌「ジャーナル・オブ・バーテブレート・バイオロジー」でオンライン公開された。(後藤幸樹)
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