台湾政府の要人に直撃!! TSMC第3工場熊本誘致の可能性は? 台湾国家発展委員会・劉鏡清氏インタビュー
日本の内閣官房に当たる台湾国家発展委員会の劉鏡清主任委員(61)は、熊本日日新聞のインタビューで台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出に触れ、「発展には自信を持っている」と指摘。第1、第2工場が菊陽町に立地する状況を踏まえ、第3工場の誘致も「チャンスは非常に大きい」との見方を示した。(聞き手・中尾有希)
─台湾政府の半導体戦略に関する政策を担うとともに、TSMCの社外取締役も務めています。TSMCの熊本進出をどう捉えていますか。
「個人の見解だが、熊本でのTSMCの発展には非常に自信を持っている。TSMCがソニーと合弁で子会社のJASMをつくったのは、ソニーとの関係が非常に良かったからだ。利益重視というよりも、重要な顧客との長期的な関係を維持するためだ」
「第1工場の利益率は高くない。生産する回路線幅12~28ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体は先端とは異なる製品だからだ。第2工場で生産する6~7ナノメートルの製品とはウエハーの価格で12~15倍の開きがある。第2工場の主な顧客は自動車産業となるため、日本での市場には期待できる。第2工場が完成すれば、二つの工場で十分な生産能力を確保でき、スケールメリットが出せる。しっかりとした利益が見込める」
-第3工場は誘致できるのでしょうか。
「熊本は日本の他の地方よりも、サプライチェーン(供給網)や人材育成の面で先んじており、既に重要な強みを持っている。サプライチェーンは分散するほど、リスクやコストが上がる。人材の育成も分散するほど、難しくなる。個人的に、第3工場は熊本に、と願っているが、決定権はTSMCの企画チームにある。少なくともまだ取締役会には報告されていない」
─第3工場の誘致は、交通渋滞がネックになるとの見方もあります。
「第1工場の建設は地元自治体や日本政府、関連企業の協力で効率よく進んだ。交通渋滞の問題も、熊本県が解決に取り組んでくれると考えている」
-サプライチェーンの再編で、日本への投資を増やすのはどうしてですか。
「中国経済の不安定さから、多くの台湾企業が中国から撤退している。日本は安全で信頼できる友好国だ。法律や税制といった分野で、サプライチェーン企業の日本進出をサポートしたい」
─具体的には。
「台湾政府がサプライチェーン企業が相談できる統一の窓口を日本国内につくって、日本政府と調整を図ることで、企業をサポートしたい。現時点では熊本に開設する可能性が高い」
─日本との連携は今後も深まっていきますか。
「日本は素材や製造装置の生産に強みがあり、台湾は後工程のパッケージング技術に強みがある。日本と台湾は相互補完できる関係にある。日本は高齢化で人口減少が進み、ロボットやオートメーション技術の需要が増えていくだろう。需要が拡大する半導体の分野で、今後も連携を図っていきたい」
※インタビュー前、劉氏が日本記者クラブの記者会見で発言した内容も一部、盛り込んでいます。
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