新米、やっぱり高め 熊本県内のスーパーや直売所、昨年と比べ3~5割高も 品薄状態も続く 消費者ため息、農家は「コメ離れ心配」
熊本県内のスーパーや直売所に2024年産の新米が並び始めた。ただ、価格は昨年より高めで品薄状態も続く。店によっては3~5割高となっており消費者からは、ため息が漏れる。一方、JAや米卸業者は新米を確保しようと集荷に必死だ。国のコメ政策に振り回され続ける農家からは「高値でコメ離れが進まないか」と不安の声も上がる。
熊本市北区の「you+youくまもと農畜産物市場」。阿蘇や天草産のコシヒカリが売り場に並ぶと、買い物客はわれ先にと手を伸ばしていた。
阿蘇産が5キロ3680円。天草産が5キロ2880円。いずれも昨年より3割ほど高いが、在庫はすぐになくなる。全国的な品薄を受けて県外に送るために購入する人もいるという。直売所を運営するエーコープ熊本直販店舗事業部の東章夫課長(52)は「これから徐々に新米が入ってくる。焦らずに購入してほしい」と呼びかける。
熊本市南区のスーパーでは新米の入荷翌日には売り切れ状態に。南区の主婦(33)は「いつ手に入るか分からないから買い置きしておきたいのに」と困り顔だ。店によるとコメの品薄は1カ月以上続いている。銘柄によっては5割ほど値上げしたが、毎日のように入荷の問い合わせがあるという。
農林水産省の統計では、天候不順による23年産米の流通量不足などで、今年7月末の民間在庫は82万トンと12年ぶりの低水準だった。そこに加えて8月には、南海トラフ地震の臨時情報発表や台風に備えるために〝買いだめ〟も発生。スーパーでの販売量が前年比で2割から5割弱伸びたとの数字もある。
一方、24年産米の8月時点の作柄は熊本を含む31都府県が「平年並み」の予測。今後、全国で新米の収穫が進めば流通量は増える。しかし流通関係者は「昨年より高値での推移は避けられない」と見通す。集荷時にJAや米卸業者が農家に払う額自体が、昨年より上がっているためだ。
阿蘇地域では、JA阿蘇が農家に前渡しで払う「概算金」をコシヒカリ1俵(60キロ)当たり7500円引き上げた。過去20年で最高となる1俵2万2020円だ。早期米を出荷した天草地域のJA本渡五和やJAあまくさも、30キロ当たり約3千円上げている。全国の主な産地でも概算金は2~4割程度上昇している。
八代市の米卸会社の担当者も「県内外の同業者とコメの奪い合いになっている」と明かした。県南地域を中心に農家と直接取引しているが、今年は農家側から断られるケースも相次いでいる。昨年比で2・5倍の価格を県外業者に提示され、売り先を変えた生産者もいたという。
総務省の家計調査によると、今年1~6月の1世帯当たりのコメ購入量は前年より増えている。人吉市の男性農家(61)は「(減反で)コメは要らないと言われたり、急に求められたり、振り回されている。高値でさらにコメ離れが進まなければいいが」と話した。(馬場正広、岩崎皓太)
日本のコメ政策 戦後、生産量の増大や食生活の変化でコメ余りが常態化したことを受け、国は1970年に生産調整(減反)を開始。都道府県ごとに作付面積を配分し、減反に参加しない集落へのペナルティーや参加農家への補助金によって、主食用米の生産を抑えてきた。2018年には生産調整を廃止。国は、生産現場の判断材料となるコメの「需給見通し」を示す形に改めたが、主食用米の生産を抑制する方向性は変わっていない。
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